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バケモノの子のよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
4.0
母子家庭に暮らす9歳の少年・蓮は、交通事故で母親を喪ってしまう。渋谷の街で途方に暮れる蓮の前にバケモノが現れ、蓮は彼等を追いかけているうちにバケモノの世界《澁天街》へと迷い込む。粗暴な半端者ゆえに疎んじられていた《熊徹》というバケモノに自身を重ね、『強くなれるなら』と熊徹の弟子になることを決める。心を開かず名を明かさない蓮に、熊徹は九太と名前をつける。


◆世界にバケモノの街、数多あれどー

細田守監督が手掛けた長編アニメーション四作品目。細田監督の《ケモノ》愛が全面に押し出された作品に仕上がっています。物語の舞台となる《澁天街》に暮らすバケモノ達はみな獣人のような容姿であり、過去作品の中で一番ケモケモしていました。画面から溢れんばかりのケモノ感。ビジュアルの癖は多少ありますが、個人的には全く気にならず。バケモノたちは皆が個性豊かな素敵なキャラクターであり、観ていて苦になる事はありませんでした。ケモケモ声優陣(役所広司、山路和弘、大泉洋、リリーフランキー、津川雅彦)の皆様方も素晴らしかったと思います。

《バケモノ》ありきのファンタジーな世界観に振り切ってくれているので、ケモケモが跋扈する画面にアレルギー反応はありません。本作は前半と後半でガラッと毛色が変わりましたが、後半で描かれていた人間の世界は細田監督作品には珍しく《都会》が描かれていました。細田監督の描く渋谷の街も新海作品と同等のクオリティで大変に写実的であり、非常にリアルに見えました。ただ、前作『おおかみこどもの雨と雪』でもそうでしたが、細田監督が描く都会は《冷たく、人間関係が希薄で、住みにくい》場所として描かれているのは少し気になりました。都会も楽しいのに〜。


◆真似されて嬉しくない親などいないというがー

家族愛や母の愛を描いてきた細田監督が今作で描いているのが《父と子の関係》でした。身寄りをなくした九太が熊徹に弟子入りし、文句を言い合いながらもお互いに成長していく姿。人間界で再開した蓮と実父が、ゆっくりと時間を埋めようとする姿。熊徹のライバルである徳の高いバケモノ・猪王山も、一郎彦と二郎丸という二人の息子がおり、子育てに葛藤があったと明かされていました。

母子家庭から父子家庭のような熊徹との生活に身を置くこととなった九太。相変わらず青臭さのある理想論×昭和家庭スタイルの細田節全開ですが、今作は前作程これが気になりませんでした。だらしない父ちゃんが家で文句を垂れて、九太がせっせと家事をこなして身の回りのお世話をする。二人の関係が親子ではなく《師弟》という設定のおかげでマイルドに受け取ることが出来ました。これが実の父親だったら碌でもないオヤジすぎる。

九太が熊徹に弟子入りして8年。17歳になった蓮がふとした拍子に人間界に戻れた事で物語はターニングポイントを迎えます。思春期の青年が自身のアイデンティティに葛藤する様子。思春期の悩みに加えて特殊なルーツを持つが故の《バケモノor人間》という将来の選択を迫られる描写は、前作で《オオカミor人間》の選択を迫られた雨と雪のそれと同じようでした。

生意気だった少年が成長し、自らの意思で一郎彦を追いかける事を決意したシーン。熊徹だけでなく、幼い頃から彼の側で成長を見守ってきた多々良や百秋坊へ自分の思いを不器用ながら言葉に現し、自分を叱ってくれた事に対して謝辞を述べた九太。


ー誇らしいのう。

ー誇らしいぜ。


◆何泣いてんだよ馬鹿野郎!

大人の成長は見えにくい。反面、子供の成長には目を見張るものがあります。でもそれは当たり前のこと。見た目の変化は言わずもがな、心も思春期にかけてグンと伸びていきます。成長曲線が頭打ちになっている大人は見た目にも大きな変化はなく、『大人と子供の時間は違う』という言葉が暗に示しているように心の成長まで止まってしまいがちです。

傲岸不遜で宗師候補でありながら品格に欠けていた熊徹は、エリクソンの発達課題で示されている通り、九太(他社)とのかかわりを通して宗師が驚くほどに内面の成長を遂げる事ができました。


九太は、自分じゃ一人前のつもりでいるが、
今はまだ誰かの助けが必要なんだー。

俺ぁ半端もんの馬鹿野郎だが、
それでもアイツの役に立ってやるんだー。

アイツの胸の中の足りねぇモンを、
俺が埋めてやるんだー。

それが、半端もんの俺に出来る
たった一つのことなんだよ!


猪王山との激闘を制し、不意の凶刃に深手を負い、それでもなお《宗師になれたこと》よりも《九太のこと》を気にかける熊徹に強い親心を感じました。

息子が小学校へ進学して間もなく1ヶ月。慌ただしい新生活に親の方がついていけなくなりそうで四苦八苦してましたが、なんだか熊徹を見てたら《パパ頑張るぞパワー》が湧いてきました!成程これが胸ん中の剣か!!


あるだろ!胸ん中の剣が!
胸ん中の剣が重要なんだよ!


仮にアイツが転生しても、
せいぜい付喪神がいいところさ。



ふらふら迷ってると、
胸の中からぶっとばすぞ!



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みるきぃちゃんと細田監督マラソン四作目!
細田監督作品は初期作こそ至高!と思っていたけど、初鑑賞の今作めっちゃ刺さった!

今日でフィルマを初めて三年目。

三十路前にきちんとアウトプットが出来る人間になりたくて、文章を書く練習も兼ねて二十九歳の誕生日に始めたFilmarks。当時はこんなに素敵なフィル友が出来るだなんて思っていませんでした!

みるきぃちゃん、
誕生日に素敵な思い出をありがとう♬.*゚

フォロワーの皆様、
これからもよろしくお願いします♬.*゚