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バケモノの子のmasayaanのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
2.5
日常風景のほんの小さな亀裂から異世界へと迷い込み、新たな名前を与えられ、子供が大人になっていく・・・・という、まさに『千と千尋の神隠し』的導入でスタート。で、いかにもシネフィル的な自意識というか、現代において現代の家族像を描きたくなってしまう生真面目な感じ(是枝裕和を見よ!)は、決して非難されるべきものではないだろうが、しかし手に余る主題ならば最初から手を出さない方が賢明だろう。

扱いたい題材がたくさん散らばっているのは賑やかでいいが、通底させる主題は太く確保すべきだ。「男にとって自分が父親であることとはどういうことか」「子にとって父親とは何か」「家族は血縁か、共有した時間か」「本当の強さ(=心の剣)とは何か」などなど、どれかを大事に育てて映画の芯にすべきだったと思うが、いずれも中途半端。すべてを描こうとしていずれも描けてない。(むしろそれらを同時に描こうとして、脚本に生じている歪がすごい・・・・)

で、予想通りとは言え、言葉、言葉、言葉の連続・・・はやっぱりキツい。「渋谷で鯨のバケモノと決戦するアニメ」という前情報があったため、文学作品『白鯨』の解釈として、楓が途中で「おじいさんは鯨と戦っていたようで、自分と戦っていたと思うんだよね」と解説し始めた時点でゲンナリ。さらに、決戦の時になれば、「これは自分の闇との戦いでもある」的な解説が入るので、二度ゲンナリ。文字通りの子供「騙し」。
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