Narmy

バケモノの子のNarmyのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
3.5
バケモノの世界の1つである渋天街を束ねている宗師様の跡目候補である熊徹。
宗師の条件は強さ品格とも一流であること。
ところが熊徹は粗暴、傲岸不遜、手前勝手なため、もう1人の跡目候補である猪王山のほうが、皆の信頼はあつい。
一人も弟子のいない熊徹はまずは弟子を探すことにする。

またその頃人間の世界では、9歳の蓮が突然の交通事故で母を亡くす。
連は親戚の家に引き取られるのを拒み、1人で生きていくといいその場を逃げ出す。

バケモノの世界で一人ぼっちの熊徹と人間の世界で一人ぼっちの蓮は、渋谷で引き寄せられるように出会う。

師匠と弟子という関係にはなるのだけど、実際のところ、それは父と子の成長物語。
九太(蓮)を育てることにより、親である熊徹も成長する。

全体としては中に込められたメッセージの数々にかなり感動する。
これでもかというくらいに多い。
九太はバケモノの世界においては赤ちゃんも同然。
熊徹の真似をして、どんどん成長していく。
親の庇護のもと過ごす成長過程も狭い世界から飛び出す思春期の過程もうまく表現されている。

そしてもう1組の親子。
決して問題のある家庭ではないのに、愛情も注いでいるはずなのに、歪む心。
歪む心を生むのはもともとは些細なきっかけなのかも。
それぞれの親子関係に現代にもあるような問題がうまく重ねられていて、レールにのせることが愛情ではないんだなぁとか、優しい嘘が時には子供をどん底に落としてしまうことがあるんだなぁとか、子育ての難しさを痛感しながら観た。
触れ合い向き合って育てることの大切さ。
そして「強い」にもいろんな意味がある。

ラストの出来事でやっぱり熊徹は親なんだということを再認識。
子は親に育てられ、親も子に育てられ、それぞれがお互いを助け、助けられる。
でも親の愛は子供の愛とは少し違い、完全に無償で、その身を捨てる覚悟で注ぐことができるということ。

いつかは子離れをしなければならない。
独り立ちした子供のこれからの土台となるものが親の教えである胸の中にある剣であり、道を踏み外しそうな時に抑えることができるのは育て見守ってきてもらったすべての人のおかげ。
人間は決して1人で育つ事はできないのだから。
ところどころ腑に落ちない点はあるものの、全体としてはめちゃくちゃよいお話♪
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