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怒りのhikarouchのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.4
人はなぜ人を信じてしまうんだろう。人はなぜ人を疑ってしまうんだろう。
そんな相矛盾することにまつわる、とてつもない作品だった。

3本の並行して進むストーリーライン。それらを切り替え繋げる編集の切れ味。サスペンスな展開と行き先の見えない緊迫感。セリフ・脚本の自然さ、役者陣の演技の素晴らしさ、豪華なキャストによる画面の華やかさ、音楽の使い方のセンスの良さ、撮影のアングルや質感の鮮やかさ、そしてメッセージ。
どれもこれも個人的にはとても好ましく、まったくもってハッピーな映画ではないし、過酷とも言える展開も複数あるが、それでもこの映画を見れたことのよろこびを強く感じる作品だった。

ここ数年で見た邦画の中でもトップクラスの超ハイレベル作品だったように思う。

素晴らしい役者陣の中でも、個人的には宮崎あおいは特筆に値する。とても難しい役どころだったように思うが、顔や出で立ち含め文字通り全身で演じきっていたと思う。もちろんそこを支える渡辺謙も、ハリウッド作品では見られない繊細な演技で素晴らしかった。

「ひとよ」のときにも思ったが、これだけ日本を代表するような豪華なキャストを揃えておきながら、これだけ攻めた作品を作ったことにも拍手を送りたい。見事だった。

何年も前から友人に勧められていて、なかなか食指が伸びずに今に至ってしまったが、やはり信用できる人からの勧めは是が非でも手を伸ばさなければならないとあらためて思い知った。
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