足らんティーノ

怒りの足らんティーノのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
5.0
「分かろうとしない人にはさあ、いくら説明したって伝わらないから」
自分の信じていることが本当だと信じきって疑わずに、人に疑念を向けて、「分かろうとしない人」に、誰でも簡単になる。

沖縄の問題が終盤やや個人の問題に収斂していっちゃった感はあるが、結局大きな問題も、つまり米兵にレイプされる少女をイコール沖縄と考えるまでもなく、全て個人の問題に還元される。

事件自体は世田谷一家殺人事件っぽいし、犯人像は市橋達也だし、生き返らせようとしたってのは光市母子殺害事件っぽい。
こうした日本人なら誰でも知ってる実際の事件をオーバーラップすることで、TVの公開捜査や指名手配ポスターを契機に芽生える猜疑心がよりリアルにクローズアップされる。

たしかに綾野剛と松山ケンイチと森山未來って似てる。

全員が素晴らしい演技の化け物たちのなかで、森山未來と宮崎あおいは突出してた。
大金と民意の裏切りの上に強行開催したわりには残念な学芸会だったオリンピックの開会式のなかで、唯一、森山未來のダンスと上原ひろみのジャズピアノだけは良かったけど、この映画でも森山未來のダンサーとしての躍動は垣間見えたし、中学生のような心の高鳴りをずっと表現できるというのは凄いというか、凄まじいと思った。

森山未來の「怒り」が犯罪者の異常性ということで深堀されなかったのは残念。

2021-199
足らんティーノ

足らんティーノ