JunIwaoka

怒りのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.0
2016.9.14 @ ジャパンプレミア

面白かった。近年の邦画がテーマとする閉塞感を悲観せずに描きながら、現代社会の中で見失いそうになる感情を体温が伝わるように生々しく感じられるから。きっと原作が良くできていて面白いだろうけど、監督の人物描写がとても丁寧で、それに応える役者陣の力量も相まってそれぞれの役に惹きつけられるものがある。
1件の猟奇殺人を発端として廻り巡る群像劇。いま読んでいるある本に「殺人などの凶悪犯罪は、単純に加害者と被害者に分け隔つものではなく、社会が内包する膿みたいなもの」と書いてあって、まさに無気力化した心に沸き立つ怒りの感情が暴力へと向かってしまう可能性は誰にでもありえる。いくつかの実在する事件を基にしてストーリーが描かれていることもあり、猜疑心を持って虚しくなることは喜んだり悲しんだりするのと同じように日常的なもの。その空虚を埋めるものいつだって誰かの存在を感じることで、浜辺に響く感情の吐露するように決して怒りに変えてはいけない。
たぶんこれから割り切れないことや無力さを感じることが増えてしまうかもしれない。それでも見失わずに信じていられるようにありたい。

追記
全編デジタルカメラで撮られているであろう白み気味の無機質な画質は、現代感を出すには最適だけど、沖縄だろうが東京だろうが、場所特有の空気感が皆無で残念だった。意図的に編集されているように思うけどね。
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