イペー

怒りのイペーのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
3.9
フーダニットのミステリーを主軸に、三者三様の人間模様が織り成す群像劇。

犯人当てで興味を持続させ、重厚な人間ドラマを展開。
鑑賞の間、ずっと握り拳。

全く異なる場所で、異なる事情を抱えた人々の心の綾を、静かに写し取っていく。

セリフや表情の細やかなニュアンスの変化、シーン毎に慎重な配慮が見え隠れ。
全編に漲る緊迫した空気は、何より李監督の演出の力でありましょう。

物語がひとつの方向に収斂していき、言葉にならなかった想いの堆積が、ジワジワと滲み出す。

やがて露わになる「怒り」は、各々が自らの人生を引き受け、過酷な運命に立ち向かう、彼らの生きる覚悟を表しているかのようにも見えて…。

胸を締め付けられるような場面が次々と!
多くの方にとって、我が身に引き寄せて考えさせられるであろう、質の高い作品。
未見の方にも自信を持ってオススメしたい。


※以下蛇足…。


それこそ主演級のキャストを揃え、いずれ劣らぬ熱演。
ただ、それぞれが俳優として背負う看板が大きく、人物の描写・配置に、遠近感を欠いていると感じてしまいました。

豪華俳優陣の"演技"が勝ち過ぎ、作品の行間を塗り潰してしまっている。
言わば、ちょっと"濃すぎる"のではないかと…。

構成が緻密で立体的であるからこそ、脚本が繊細で様々な人物に焦点が合わさるからこそ、個性の衝突が必ずしも良い結果を生んではいない部分もある…のかも…。

三浦貴大や高畑充希、脇役にいたるまで、知名度の高い方々で揃える必要はなかったんじゃないのかな…って。

役者さんが発揮する存在感と、作中人物が持つべき実在感に摩擦が生じて……うん、まとまらないんで、もういいや‼︎

演者と役柄に関して、もう少しだけ調和が取れていれば、自分にとっても忘れ得ぬ名作になったかと思います。

…長い割に要領を得ない、そんな駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
皆様の声が聞こえてくるようです。

「コイツ、何が言いたいのかサッパリ分からない」

伝えたいことを伝えきれなかった自分への怒りに、ただただ、身を震わせております…プルプル…。
イペー

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