RiN

怒りのRiNのネタバレレビュー・内容・結末

怒り(2016年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

『怒りをうまく言語化できるようになったら大人』

この物語は、話自体はどうしようもなく陳腐でした。
キャラクターとエピソードは多すぎて散らかった印象は拭えないし、シーン割が細かすぎる割にリズムがなく雑で、全体としてはかなり冗長に感じてしまう。エピソードも、ワイドショーの寄せ集めのようにキャッチーで字面ばかりの話題に辟易とすらする。さらには大切なところで説明不足で、物語の真意はさっぱり見えてこない。
『怒り』と言うものの、その怒りがはっきり垣間見えたのはたった1つのエピソードのみ。

たとえばゲイなら、たとえば悪徳消費者金融に追われる債務者なら、たとえば不幸な生い立ちなら、怒る対象はいくらだってあったはずであり、そのエピソードを挟んでこそのタイトルのはずです。

しかしそれでも、この映画の引力は凄まじかった。その引力の正体は、ものすごい力技だった、ということではないでしょうか。
見せつけられる主役級の俳優たちの演技、しつこいくらいのアップシーン、そのギリギリを引き出す細かく根気のある演出、そして鬱陶しいまでのBGM。耳障りのはずが、いつのまにか感情を持っていかれている。

それにしても今作、誰より輝いていたのは辰哉くん役の佐久本宝さんでしたね。
華のあるタイプではないけれど、だからこそこれからの邦画で生きる気がします。

彼の瞳こそ、真に『怒り』だった。
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