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怒りのkfilmsのネタバレレビュー・内容・結末

怒り(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

"悪人"と同じ原作者×監督脚本のタッグだと、観終わって特典映像を観て知った。

"悪人"も滅茶苦茶に揺すぶられて号泣して観て、映画の《強さ》で言ったら筆頭に上がる作品だったけど、
確かに同じ種類の揺さぶられ方をした。
陳腐な書き方だけど号泣した。
映画を観て泣ける時、自分が何で泣いてるのか、どうして涙が出るのか、どういう感情なのかはっきりは分からない。
いろんな感情が綯い交ぜになって、
というのが正しいんだろうと思う。

タイトルは"怒り"だけど、
全編通して、人の弱さが描かれてると思った。
苛立ち、責任転嫁、無力感、嘘、裏切り、信頼と不安、弱い、誰も彼も弱い。

役者は皆素晴らしかった。
綾野剛・妻夫木聡のふたりが特に。
ごく自然に見えて、同性愛設定だからどう、という事を感じさせなかった。
宮崎あおいさんも、本当は完璧な人(世間的に)なのに、どこか足りない人間(世間的に)の空気を完全に纏っていて、凄かった。
松山ケンイチさんは言わずもがな、奥底が優しい人間を演じさせたら完璧。

人が死ぬのは何故悲しいんだろう。
映画の中なのに。
死ぬと泣くのはどうしてなんだろう。

東京駅にいる、で号泣。
連絡をくれてよかった。
切ってしまったと思った糸が
繋がっていてよかった。

広瀬すずさんの最後のシーン。
強くなって、強くなって。
それが正しい祈りだとは思えないけど
祈りを込めずにいられない。

人は皆正しくないけれど
許せないのが辰哉だった。
あいつが一番弱い。犯人と変わらない。
事件の後の日常でヘラヘラして
他人事に置き換えて白状したのが許せない。
一生笑うんじゃねぇと思った。
弱いのは仕方ないけど。
挙句の果てに自分が裏切られた怒りに任せて人を刺す。
何も出来なかった自分自身の無力さへのやり場のなかった苛立ちも綯い交ぜになって人を刺す。
彼女の石文も読めない状態まで消せてない。
犯人を除けばあいつが一番弱くて中途半端で自分勝手で最低だった。
ああいう弱さと自分勝手さが人を殺すんだ、という意味ではめっちゃ説得力のある役どころだったと思う。

最初の事件の動機の描かれ方より
辰哉の殺人の方が綿密に描かれてた。
タイトルの"怒り"はこっちの殺人の事だったのかな。そうかもしれない。
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