凛太朗

怒りの凛太朗のレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.3
ある暑い夏の日に八王子で起きた夫婦惨殺事件を背景に、東京、千葉、沖縄に現れた素性の知れない3人の男と、彼らを取り巻く人々を描いた重厚なミステリー/ヒューマンドラマ。

ミステリー?ミステリーなのかこれは?いや、雰囲気や描き方自体は上質なミステリーのそれではあるのだけれど、所謂犯人探しを主とした映画ではないと思う。
というのも、この映画の犯人は明らかに近年起きた有名な殺人事件の犯人がモチーフとしてあるので、比較的気付きやすいんじゃなかろうかと思います。
個人的にはですね、3パートとも実は時系列が違うだけで、全部同一人物ってオチなんじゃなかろうか!?と思ったりもしたんですよ。手配写真やモンタージュが3人ともに似てたり似てなかったりしましたから、そのミスリードには乗らねーぞ!って思ってたんですけどね。
そこら辺は特に何の捻りもなかったもよう。

ヒューマンドラマとして観ると、これ程重たいものも中々ないです。
こういう雰囲気の映画、ホント好き。
犯人のあいつが壁に残した怒の文字は一体何を意味していたのか?何に対して怒っていたのか?社会なのか、それとも自分自身なのか?
犯人だけではなく、3人の男と出会う人達が感じる怒りもある。怒りというより憤りですかね。単純に何に怒ってる!ってわかりきってるような短絡的なものでもないと思いますから。

あと、人を信じるとはどういうことか?ということの重要性とその難しさですよね。
ある人を愛するあまり、アンビバレントな気持ちが鬩ぎ合う。

宮崎あおいが可愛すぎるし、更には上手すぎると感じました。
あと森山未來ですねぇ。この2人は特に最高でした。

ただ、広瀬すずの演技は、体当たりだったんでしょうけど上手いとも思わないし、やはり好きになれませんし、言うほど神経すり減らしてるようにも見えませんでした。

あとですね、どうしても気になるのが、沖縄のデモのシーンなんですけど、必要なシーンだったんですかねぇ。あのシーンがある故に、殺人の動機も、隣人すら信じられないような不信感も、全部今の世の中のせい。政権のせい。みたいな、なんとなく左翼的思想が見え隠れしてて、そこはもうちょっとフラットな目線で見られなかったんですか?って感じで、いい映画だけに残念に思いました。
凛太朗

凛太朗