おくむらひ

シン・ゴジラのおくむらひのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
2.3
関東地方へのゴジラ上陸という災害を前に、どうしようもなさが浮かび上がる役所のセクショナリズム。会議室のロングテーブルに揃って並ぶマイクなど、人と物の配置にこだわった無機的なカットは役所の融通の効かなさを表象しているのかもしれない。一つ一つのカットをある種の強迫観念で整えていくのに、それが全く繋がらず駆け抜けるだけで全く興奮のない編集。それにも同じものを表象する意図を見てとれたので決して質の悪いものだとは思わないが、鑑賞する上ではかなりのストレスだった。
そして内閣が吹き飛ばされた後の権力描写には恐ろしさを覚えた。国際社会を出し抜いて時間を稼ぎ、ヤシオリ作戦を成功させてしまう有能さは買いたい。しかし、他方でゴジラの被害に遭った一般人も権力に命じられ亡くなった役人や自衛隊員も、全てが匿名であることが問題だ。庵野監督が先の大戦について想いを馳せるべきだったのは、国同士の戦争や政治的駆け引きよりも、権力に巻き込まれることで不本意にも生まれてしまった犠牲についてだろう。日本語訛りのくだらない英語を話す石原さとみ、見当違いの謙虚さを演じる長谷川博己や、その他大根役者のカメラ目線のアップショットに気を遣って日本とアメリカという国を描くより、もっと見せるべきものがあるはず。この作品はあまりにも危険なメンタリティを垂れ流している。
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