バミューダサイキックビーム

シン・ゴジラのバミューダサイキックビームのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
2.9
「薬は注射するより飲むに限るぜ、ゴジラさんよ」by権堂一佐
私はビオランテ大好き勢なんでこの台詞が頭をよぎりました。

災害後の現代日本と地続きな感のある舞台建てとゴジラ出現までのスピードが良かったからか他の怪獣映画みたいなフィクション臭さが無く確かに現実に近い風味。
一部の役者陣の演技は変な捻りを感じないストレートさがあって其処は確かにこの映画の雰囲気にマッチしてた。

しかし、国際社会の複雑な力学はリアルだと思うけど出てくる海外側の人達の写し方に説得力が無い。なんか場にそぐわないアニメ的な臭いが強い。
それと所々のエキストラの拙さが虚構とも現実ともとれない荒らさに感じられたしリアルさが売りの諸会議シーンも散らかってる様で纏まりが無い。
(そもそも閣僚や官僚の本物の会議なんて見たこと無いんでリアルかどうかわかんない(´Д`))
これらがどうも現実風味の紛い物の様に感じ、法制度や自衛隊等の現実的な骨組みに上手い肉付けができてるとは思えない。

構成にしてもゴジラのパートと人間のパートのバランスがアンバランス。
ゴジラ側からの脅威の描写と人間側の政治劇の配分の不味さが海外では受けなかった理由かも。
この“プロジェクトX風現実風味“は“震災とその影響からくる絶望感“を味わった日本でならウケるローカルなものなのか。
妙なオタッキーさと監督の強すぎるスタイルにゴジラのシンプルで力強かった象徴性は埋もれてしまってるような。

しかしノスタルジーと新しさが共存した特撮シーンは良かったし音楽からも好きだったゴジラの懐かしさが溢れてた。
単純にドンパチやる怪獣映画が好きな自分は多摩川近辺での戦闘シーンは迫力とカタルシスとカタストロフが有って其処は素直に楽しめた。
初代の物語性、黙示録性が影を潜め監督特有の美的センスと勢いの瞬間風速に充ちた映画だった。