タキ

シン・ゴジラのタキのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
5.0
2年前に映画館で3回見てWOWOWで見て地上波で2回見てCM抜きでまた見たくなってU-NEXTでまた見た。映画館でパンフレットをひさびさに買おうと思ったら売り切れで入荷してもすぐなくなるそうだ。売店のひとに入荷日を教えてもらえたのでその日にすぐ買いに行ったのを覚えている。
どうしてこんなに好きなんだろうと考えるにオタク魂に火がつくからなのではないかという結論に至った。出てくる人はみんなそれぞれの職務を全うすることに全力のプロフェッショナル、つまり言い換えると専門バカのオタクたちでとにかくみんな総じてアツい。平時には変わり者だとスポイルされるかもしれないオタクたちが日本を救う!なんて考えただけで血湧き肉躍る。私も小粒すぎて申し訳ないのだがなんの役にもたたないことをひっそりとやっているオタクなもので共感しすぎて死にそうだった。たぶんこのあたりの時期に「君の名は。」が公開されていたと思うのだが大人たちの頼りなさに歯噛みをしながら見ていたものでシン・ゴジラで大人たちがあらゆる知恵を結集して有事にあたる姿のかっこよさに震えたものだった。
難しい用語に早口、漢字ばかりのテロップに頭をフル回転させて見るのだが、しばしばついていけず話がブッ飛んで進行してしまうが、なんら問題はない。それどころかセリフにリズム感があって耳に心地よさすら感じる。特に長谷川博己がいい。滑舌はピカイチの芸術品だ。その上顔もいい。「政界は敵か味方しかいない。性に合ってる。」と泉ちゃんに言う矢口蘭堂の顔があまりにカッコイイのでそこだけで映画代の1800円のうちの1000円払ってもいい。泉ちゃん(松尾諭)は「矢口、まずはお前が落ちつけ。」の水ドンもいいが、ヤシオリ作戦に行く前、蘭堂が「この国には有能な人材が残っている君もいるし問題ないよ。」と言えば泉ちゃんが「幹事長なら任せとけ」と答え、ワタシはあまりのエモさに頻脈を抑えきれなかった。いつも真顔で超絶技巧早口の尾頭ヒロミ(市川実日子)が最後にサーベイデータを見てホッとした顔をして初めて微笑むとこもいいし、冗談ポイの安田(高橋一生)が、尾頭さんに「ごめんなさい(早口)」するとこは何回見ても可愛くて笑ってしまう。冷徹なまでの政界の歩き方を実践している叩き上げ赤坂(竹野内豊)もいい。政治家の家系で三世という蘭堂と赤坂は対比して見ることになるだろうが、どちらも日本という国を未来につなぐという信念の元に戦っており、どちらに転ぶのかという首の皮一枚で繋がってる感がリアルだった。「この国はスクラップアンドビルドでのし上がってきた。また立ち直れるさ。」と赤坂は言ったが今年もまた災害が多かったこともあって涙が出た。この映画を見ると私も出来ることをやらねばという気持ちが湧き上がってくる。
ラストはゴジラのシッポが大写しになってパッと終わるのだが、明らかに人間の形状が見てとれて薄れていた恐怖が蘇る。おそらくゴジラはメタモルフォーゼの一歩手前だった。凍結しているとはいえゴジラはまだ滅んではいない。人類とゴジラの起こしたこの顛末を東日本大地震をイメージするとするならそこにある脅威との共存という課題を残したのも示唆的だった。
まだ人類には考えねばならないことが山積みのままなのだ。
タキ

タキ