LalaーMukuーMerry

信長協奏曲のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

信長協奏曲(2015年製作の映画)
4.1
現代人が戦国時代にタイムスリップして引き起こすドラマ。ありがちなストーリーとあまり期待もせず見始めたけれど、うわッ、何この設定!と驚き、そして面白かった。原作は漫画で、TVアニメでもTVドラマとしても放送されたことを今頃知る。原作は信長の若い頃、斎藤道三との関係辺りから始まる、たくさんの戦国大名が一通り登場する壮大なスケールの話のようだが、この映画はその中の本能寺の変の前後のドラマを描いたものだった。
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斎藤道三と松永弾正と信長が、現代からタイムスリップした絶妙のキャラ設定の人物で(ただし映画では斎藤道三は登場せず)、高校日本史の教科書の記述(つまり未来)を、この中のわずかな人物が知っていて、それに影響され、歴史を変えようと計略をたてて動くので、細かい所は史実と全然違うのだけれど、大きな歴史の流れは結局は変わらないという運命的なストーリー展開が良い。
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こんな物語をつくるには、史実をよく頭に入れておかなければ決してできないし、その上で歴史上の人物のキャラクター設定をして、壮大なストーリーを作り上げた原作者(石井あゆみ)には敬意ですね。
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原作もTVもみておらず、信長、光秀、秀吉、三人の関係性と、本物と偽物がいるという驚愕!の設定のせいで、史実と整合させて理解しようとする私の頭の中ではちょっとした混乱が生じましたが、何とかついていけました。今度は原作を読みたくなりました。 
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平和な世の中。今では当たり前と思えることも、戦国時代には誰も想像できなかった。戦国大名の頭の中に「平和な世の中をつくる」という思いがあったとは私には到底思えない(きっと歴史を後から見た作者が登場人物にそんなセリフを言わせ、平和な時代に生きる現代人の共感を得ようとしているのだろう)。敵対勢力を一掃することこそが天下を統一する方法、そうして天下の独裁者になること、それが戦国大名の目的だったはず。そして、それを成し遂げた非情な独裁者が結果的に平和な時代を生み出した。後から見ると平和な時代とは、天下布武(つまり圧倒的な武力)で初めて実現したというのが本当の流れ。決して平和的な話し合いによって平和な世界が生まれたのではない。
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このことは現代の世界でも当てはまる。話し合いで平和が得られると思い込むのは、平和な時代しか知らない人間の絵空事。話し合いでできるのは対立状態の現状維持だけ。残念ながらこれが歴史の真実と思えます。
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脱線してしまいました。原作、読みま~す。