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杉原千畝のCOZY922のレビュー・感想・評価

杉原千畝(2015年製作の映画)
3.7
ビザ発給により6000人ものユダヤ人を救った外交官 杉原千畝。ドライな目で見ると越権行為であり、出世はもとより下手をすると自分や家族の命さえ危険に晒される状況下での人道的な判断。杉原千畝という人の功績を知ることができ、ほんとに見てよかったと思う。

平和な場所で歴史を振り返ることのできる今だから、何の疑いもなく賞賛できる。でも、当時他国との緊迫した関係の中で、自分や家族の身の保証も無い状況でなかなか実行できることじゃない。たとえユダヤの人達の、命を乞わんばかりの顔を見て心が揺さぶられたとしても。。

そう考えると彼は信念の人であり心の強い人だったのだと思う。同じ日本人としてほんとに誇らしい。Wikipediaによると日本政府による公式な名誉回復は2000年とのこと。ビザ発給から60年を経ての名誉回復。これが存命中になされていたら、と思うのは私だけじゃないだろう。

杉原千畝という人をきちんと知ることができたのは映画のおかげ。でも、彼の功績が素晴らしいだけに映画には若干物足りなさを感じてしまった。彼の葛藤や、リトアニアを追われドイツからも去った後 どう過ごしたのかもう少し丁寧に描いてほしかった。また、彼によって救われた人達の子孫の話もあるとよかったと思う。ただ、このあたりは いろいろ大人の事情があって難しいのかもしれない。

本作を見ながら、天才数学者アラン・チューリングを思い出した。分野は異なるけれど素晴らしい功績を否定され最近まで名誉回復されなかったという意味では同じ。世の中には、存在を否定されたり名誉を傷付けられたりして、戦争に埋もれた素晴らしい人材がまだまだたくさんいるのかもしれない。そういう人達が正しく評価されることを願ってやまない。
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