継

杉原千畝の継のレビュー・感想・評価

杉原千畝(2015年製作の映画)
4.0
杉原千畝(ちうね)と言えば, 第二次世界大戦中にナチスドイツから多くのユダヤ人を救出した “日本のシンドラー” 。

ですがこの夏, これを一部否定する新刊が発売されました。
菅野賢治著「命のヴィザ」言説の虚構 〜リトアニアのユダヤ難民に何があったのか?〜 。

NYのユダヤ機関に眠っていた第1次資料を徹底的に分析し直したもので, 結論から言うと杉原はナチスドイツではなくソ連の共産主義からユダヤ教徒を救おうとした,というもの。
以前からそうした意見はあったようですが, 確固とした学術資料=証拠が出てきたという事でしょうか?
一般向けというよりはもはや研究・学術書の体裁📖で, その分厚さやお値段も専門書レベル。興味はあるんですが手が出せないでいます😹
まだ発刊から間もなくて検証〜評価には時間がかかるでしょうが, 杉原がビザ発給に踏み切った背景には何があったのか?究明が待たれるところです。
いずれにせよ, 杉原の功績が揺らぐような事は全く無いわけですが。


🍕


「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そして、報いを求めぬよう」

これは劇中に何度か出てくる杉原の母校の校訓。
ドラマ・レビューに書いた白洲次郎の話に「ノブレス・オブリージュ」って言葉が出てきて, これは “(財力や権力, 気位の高さを)持つ者は,持たざる者に分け与える義務がある” って意味なんだけど, ちょっと似てるなぁと。
アメリカと戦っても勝ち目がないと, 多大な犠牲を孕むと 大変な危惧を抱いていたのも同じ。

“彼等を救えるのは自分しかいない”というのはとても尊大な矜持(きょうじ)ではあるんだけれど,
それは “正しい上から目線”とゆーか, 人の上に立つ・もしくはその生命を預かる立場にいる者なら, ましてや戦時下なら尚の事, 持っていなければならない意志, プライドに思えます。
杉原や(彼等を船へ乗せた)ウラジオストックの領事は国に仕える役人だったわけで, 正しい行いをするに当たって国に背かざるを得なかったのはさぞかし無念だったろうなぁと。
あの領事も同じ学校卒。
培(つちか)われた哲学による生命のリレーは, 実に危うい橋を渡りながらもバトンを繋ぐ, 堅牢な意志に貫かれていました。
継