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懲罰大陸★USAのmegurosのレビュー・感想・評価

懲罰大陸★USA(1971年製作の映画)
3.8
アメリカ国内でのベトナム戦争反戦運動の状況を背景としたモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)。

当時の大統領ニクソンは、1950年に成立したマッカラン国内治安維持法を発令、反政府的・危険分子とみなされた人々は一方的に拘束されていた。その情勢に恐怖を覚えたイギリス人が監督。

この映画でも国内治安のための「緊急事態宣言」が出されており、危険人物と見なされた人物(反戦活動家)は即座に逮捕拘束され、証拠不要&憲法で守られた基本的人権も全無視の簡易裁判で即刑務所か懲罰公園(Panishment Park)を選ばされることになる。※刑期が異常に長いので大体が懲罰公園を選ぶことになるのだが...。

懲罰公園では、水も持たされず灼熱の大地を3日間をかけて85キロ先にあるアメリカ国旗を目指すことになり、無事に辿り着けば無罪放免、後発で追いかけてくる警察に捕まると失敗となり、宣告された刑がそのまま適用されることになる。警察からは「我々は暴力行為を許されてない、邪魔もしない」と最初に説明されるも、実態は刑務所の新設が間に合わないという懲罰公園設立の理由もあり入ったら最後。実態は人狩り場であり、新兵の訓練場となっている。

映画は、この懲罰公園での逃走劇と裁判シーンを交互で見せていくが、どちらの会話シーンでも裁判官側及び警察は議論の中から真実を導くつもりなどなく、被告たちを”しつけ”をしなければならない対象としてしか見ていないため会話は最初から不可能。高圧的に振りかざされる正義というものはかくも恐ろしいものなのかと思うと同時に、実際に見覚えもあるからゾッとする。

さらに、劇中「どんなに納得できなくてもこのゲームを考えたやつのルールに従うしか生き残る道はない。それは、制度に疑問を感じながらこの国で生きていくことと同義である」...とか語られてしまって苦しくなる。
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