ブルームーン男爵

ディオールと私のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

ディオールと私(2014年製作の映画)
3.9
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィト)を率いるアルノーが、ファッション業界で最初に買収したのがディオールだが、ディオールのために親会社ごと買収してしまったというのは有名な話だが、それだけディオールというのは、フランスを代表する伝統のメゾンなのだ。

創業者のクリスチャン・ディオールは裕福な家に生まれ外交官になることを嘱望されるが、ファッション界に入る。エレガントで優美なデザインで一世を風靡し、名門メゾンとなる。そんなメゾンにメンズのポレタポルテのデザイナーであるラフ・シモンズがやってくる。そんなラフが、デビューコレクションを完成させるまでのストレスフルな8週間のドキュメンタリー。

ディオール全面協力とのことで、「パリコレ」で発表される洋服がつくられるまでが、非常にリアルに分かる。アートの鑑賞が日課でポンピドゥー・センターに出かけてインスピレーションを得たり、NYの顧客のために職人が出張してしまって憤るラフの姿や、職人さん同士のたわいもない会話などがリアルにフィルムにおさめられている。世界に名をとどろかす伝統のメゾンも人によってできているのだと実感させられる。

そしてメゾンの仕事の結晶としてのパリコレ。壁を花が覆い、そこにラフ・シモンズのデザインをメゾンが職人技で実現した華麗な洋服が流れていく。ディオールの瀟洒なデザインに思わず、溜息がでる。特に美しい色彩感覚には、ラフのアーティスティックな感性が感じられる。

とても上質なドキュメンタリーだった。