茶一郎

ミストレス・アメリカの茶一郎のレビュー・感想・評価

ミストレス・アメリカ(2015年製作の映画)
4.1
 【記録】
 カーストの高い文芸クラブに入会できずフラストレーションを溜め込む大学生トレーシー、「自由奔放」を絵に描いたような生き方をするブルック。ノア・バームバック作品では常に「大人に憧れる大人なコドモ」と「大人になれない子供なオトナ」の対比がモチーフとしてありますが、今作『ミストレス・アメリカ』ではコドモ=トレーシーがオトナ=ブルックを小説として消費する際の一人語り分析が挟み込まれることで、この対比がより際立つ構造になっていました。どっちが「コドモ」だか分からなくなってくる対比は、次作『ヤング・アダルト』に続いていきます。
 今作で「オトナ子供」を演じるのは前作『フランシス・ハ』でやはりオトナ子供を演じたグレタ・カーウィグ、彼女に対するブルックの一人語り「朽ち果てた若さを引きずっている」は、バームバック作品全部に登場する「オトナ子供」を言い表す見事な分析です。
 低予算、かつ非常に限定的な舞台設定にも関わらず会話のテンポ、キュートな登場人物で魅せていく。監督のコメディセンスが、恐ろしく発揮されている一本でした。
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