YoshihiroKubo

母と暮せばのYoshihiroKuboのレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
4.0
今日の試写会は山田洋次監督最新作「母と暮せば」。吉永小百合と二宮和也の共演で話題の作品だ。

冒頭原爆投下のシーンがあるが、お決まりのキノコ雲は描かれない。観客の眼に突きつけられるのは、その高熱で一瞬で溶けるインク瓶だ。斬新な表現ながら、圧倒的な説得力だ。

長崎の原爆で息子を失った母(吉永小百合)の元に、生前と変わらぬ姿で死んだ息子、浩二(二宮和也)が現れる。被爆地で生き残った人たちの暮らしの中で、母と死んだ息子の奇妙な生活が始まる。

息子の恋人に黒木華、母を慕う上海の叔父さんに加藤健一など、脇も演技派が固めるが、そのほとんどが吉永小百合と二宮和也の二人芝居だ。吉永はもちろんだが、二宮くんの演技が素晴らしい。映像的には被曝による悲惨なシーンは全くといってもいいほど出てこないが、小さな家の中で交わされる母と亡き息子の会話が、時に観客を笑わせながらも涙を誘う。

吉永小百合の作品を見るたびに思うことだが、この人は本当にバケモノだ。トーンを落とした画像とはいえ、大学生の母親役(40歳くらいの設定か?)を難なくこなし美しい。そういう意味では二宮くんも大学生の役をまだ違和感なくできてしまうのだから、このふたりは正に適役だったのだろう。

大げさな演出は全くないし、二宮くん目当てで見に来た若い人にどれだけ訴えることができるのかはわからないが、昭和から続く「邦画」の味わい。静かに、厳かに、心に訴えかける山田洋次の映画だ。吉永小百合ファン、二宮くんのファンはもちろんだが、これは「母」と「息子」の映画。「母親」が見たときには、特に訴えるものがある気がします。