小一郎

母と暮せばの小一郎のレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
3.9
なかなか興味深い映画だった。原爆で唯一の身寄りだった息子を亡くした母のところに、亡くなったはずの息子があらわれる。戦争の悲惨さを痛感し、亡くなった息子を悼む泣ける物語かと思いきや、自分的にはさにあらず。

人はただー人残り、孤独に陥り、リアルな三次元の世界で苦しくなったら、どうやって生き、どうやって幸せを感じるのか、という話だろう。

(ここから先は極めて個人的な曲解なので、これから観る人で、純粋に楽しみたい人はスルーが吉かと)。

人が生きていくには、精神的な拠り所が必要だ。だから家族をつくったり、組織に所属したり、神を信仰したりして、自分が何者かを確認し、孤独を癒やし、心を落ち着かせる。何を拠り所にするかは人それぞれだけど、この母はそれが息子なのだろう。

息子の遺留品が見つからないうちは、亡くなったことは認めない、即ち生きている可能性を拠り所にするが、3年目の命日に、さすがに現実的ではないとあきらめると、亡くなったはずの息子があらわれる。

その息子は、母が生み出した妄想だ。母は、それから、妄想を拠り所に生きるのだ。息子の許嫁だった女性も、母の孤独を癒してはくれないのだ。頼みの綱は自らの妄想力が生み出した、息子の姿をしたイコンだ。母がキリスト教信者なのも意味深長ですな。

オタクであり、哲学の本を書いていた本田透に言わせれば、幽霊萌え、二次元の勝利といったところかも。リアルな三次元の世界で幸せになれなかったら、自分の妄想の世界に生きて、幸せになるしかないじゃないか、と。数年前、二次元キャラクターと一緒に泊まって楽しむというのを温泉旅館がPRしているのをテレビでみたけど(今もやっているのかしら)、それに通じる感覚を覚える。

一歩間違えれば、変な話になる気がするけど、そこは大女優・吉永小百合さんとジャニーズの二宮くん、山田洋次監督。奇麗にまとまっており、周りの女性は冒頭から鼻がぐずりっぱなしだった。

だからこそ、エンディングは何これ?感があるかもしれないけど、「現実が苦しかったら妄想しようよ」がテーマだとのマイ解釈によれば、納得、幸せ、妄想の勝利。しかし、これって小劇場で上映するような映画じゃないの?