このレビューはネタバレを含みます
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映倫に審査を断られ(そもそも通そうとしていなかった)、そのため配給会社も見つからず自費ですべて制作しセルフR18+指定を設けたことで話題になった今作。
x99本目は見ようと思ってたけどなかなか手が出せなかった1本を見るという縛りを勝手に設けているので、499本目となるのは本作「無垢の祈り」です。
(因みに
99本目：デビルマン
199本目：ハッピーアワー
299本目：リップヴァンウィンクルの花嫁
399本目：ツィゴイネルワイゼン)
見るといっても内容からDVD化BD化の予定はなく、劇場公開は終わっているのでアップリンク・クラウドのオンラインレンタル(700円)が現在唯一の視聴方法となります。
最初にも触れたとおり、今作はR18+も飛び越えた作品なので耐性ない方はあらすじを読むだけでもきついかもしれないのでこれ以降は読まない方がいいかもしれません(個人的には見てほしいけど※理由は後述)
何が映倫的にあれなのかというのはこの映画が始まって一番最初に出てくる登場人物名がペドフィリアってことで察してください。
簡単なあらすじとしては、主人公の女の子９才のフミは義父による虐待を日常的に受けており常に顔は青アザがある。
母親もDVを受けてはいるが、よくわからない神様に祈り前世の行いが悪かったとかカルマをしょっているとか少しタガが外れてしまっている。
そんな日常を過ごすフミだが、テレビで近頃骨だけを抜き取る殺人鬼が出没していることを知る。
家から抜け出し自転車で廃工場をめぐり時間つぶしをしていると"在るもの"を発見したフミだったが、っていうストーリー
正直セルフR18+って看板が独り歩きしているだけでそれほどひどい描写はない印象でした。
でも終始薄ーいマクみたいな絶望が張り付いているような息苦しい映像が続く。
直接的ではないけど間接的にはわかりやすく想像に任せるスタイルがとられているので考えれば考えるほど精神にくる仕様になっている。
内から殺しにやってくる、真綿でじわじわと首を絞められているような。。
また廃工場の汚いけど綺麗な夜景、退廃感がプラスされる。
この作品は幼女虐待を扱っているので、性の部分も描いているのだがそこは直接的に描くことは流石にできないので主演の女の子に似せた人形を使っている。しかし、これが何とも言えない不気味さをさらに増幅させている。
学校では虐められ先生には見て見ぬふりをされ、家に帰れば義父に殴られ時には性的暴行を受け、母親に至っては性的暴行を受けた事実を知ると女として男を取られたと思われ足切ってやると錯乱され、次々に退路がたたれていくフミ、ジャケの公衆便所の狭い個室で寝転がるフミの姿に重なるようにどす黒い絶望に囲まれていく。
大人になっていくと答えはたくさんあるんだよ。それに気づいちゃった奴らがいっぱいいるんだよ。
終始寡黙だが序盤は鼻歌を少し口ずさんでいたり、トモという女の子と普通に話していたりするのだが、物語が終わりに近づくにつれ目から生気が失われていく。そしてラストシーン堰を切ったように溢れだす無垢の祈り
絶望しかない日常から祈りは届くのか、、が途中のシーンで2035年に場面が切り替わっているのを思い出すと。。
この作品を今アップリンククラウドで見るんであれば、必ず特典映像の舞台挨拶の方も見たほうがいいです。
なぜこの作品を作ったかについてとか撮影方法とか現場の雰囲気とか監督自身が語っています。
映倫的には幼女虐待を題材とした時点でもう審査が厳しいらしい、しかし原作の平山さんはこういう「こんなの現実にはいっぱい起こっている、実際2015年に関して言えば発表で12万件、一日で400件」
監督も続ける「実際これは氷山の一角で、これ以上にあるでしょうね。」
なぜ現実から目を背けるのか、臭い物に蓋の精神なのだろうか。
「この映画を見てなにか行動してほしいとかじゃないんです。でも頭の片隅にでもこういうことがあるんだととどめてほしい」
「実際こういう子は一人でも理解者がいると、救われる。一人でもいると文字通り世界が変わるんだ」
そんな言葉で締めくくられた舞台挨拶だった。
報道される事件で怖いな、可哀そうだなと思う、でも凄惨な事件は次々起こる。そのため人間(自分も含め)はすぐに忘れていく。
女子高生コンクリート事件だって、犯人は出てきてもう一回事件起こして捕まっているし、サカキバラに至っては本出して一儲けしているし、ペッパーランチ事件があったにもかかわらずいきなりステーキには人が大勢詰めかける。
そんなこと詳細にいちいち覚えていたら精神がおかしくなるんで神様が忘れるように作ったのかもしれない。
でも詳細ではなくても頭の片隅にはおいておこう。いつかなければいいが、もしも祈りのあった日のために。
