垂直落下式サミング

トランスフォーマー/最後の騎士王の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
物体・認識・関係の変容による有機的な進歩の可能性というのが、本作のストーリーの意図したテーマっぽい。人は変われるのか、変わった先に何があるのか、変化のない世界など退廃と同じではないのか、だからこそ人はトランスフォーマーに魅入られるのではないか、と言おうとしているのかもしれない。
そこんところはマイケル・ベイなので語り口が雑すぎて相変わらずよくわからないが、不思議と前のやつよりは見やすかった気がする。
敵がグニョグニョして変形するのはさすがに不評だったのか、今回はちゃんとガシャガシャやってみせてくれるので、やっぱり作り手たちも前作は不本意なところが多かったのかもと、色々勘ぐったりもした。
今回の俺的みどころは、敵の中でデザインが一番可愛かった奴がリズミカルな連係プレーで首を刎ねられてしまうところ。さらに、ラストで横一列に並んだ敵の首を剣の一振りで刈り取る場面が印象的で、今回は刃物による斬首シーンや至近距離のヘッドショットなど、頭部へ致命的な損傷を与える攻撃が多くて、いよいよ野蛮さに箔が付いてきた。
最後の敵を倒したあとで、「私はオプティマスプライム!」とここにきて自分語りを始めるお約束はなんだかもう慣れてしまったし、それこそ夕陽を背にしたラストカットは、ストレートなアメリカ娯楽映画の伝統に則った綺麗な幕の下ろし方にみえてきた気がする。作品が進歩したというより、5作目にして調度いいシリーズとの距離の取り方がわかってきた感じだ。
今回は、ツインズとかサイドスワイプやディーノのように、コイツらは前作とのあいだでおこった戦いで死んじゃいましたっていう愛のない展開はなかったので一安心。次の話を語るためにキャラクターに見切りをつけるのは構わないけど、ちゃんと物語のなかで彼等がどうなったのかをみせてほしいし、まして口頭で「全滅しちゃいました」って言うだけのぞんざいな扱いだけはしないでほしい。今回は味方が大勢生き残ったのでうれしかったな。やたらと好戦的で蛮族だったオプティマスが「兄弟たちよ、時は来た。故郷へ帰ろう。」とか言うから、不覚にも泣きそうになる。
やたらと派手に撃墜されるV-22オスプレイの映像などをみると、お前ら業が深いな!と言ってやりたい。国内に米軍基地のある同盟国としては縁起でもない無邪気さにヒヤヒヤする。