磔刑

トランスフォーマー/最後の騎士王の磔刑のレビュー・感想・評価

4.0
「最後の騎士王(最後とは言ってない)」

何が凄いって金のかけ方が尋常じゃない。近年のブロックバスタームビーの代表格はヒーロー映画と言える。しかしそれが可愛く思えるぐらい大規模なスケールで全編一分一秒。その全てに大金がかけられている感が半端ではない。何より大枚叩いて作り上げた最先端技術の最高峰が飛び交う映像だけでも観る価値がある。

超破壊が連続するバトルシーンが本作の見所だが、それに参加するオートボット各位のキャラクターの生き生きとした外連味がストーリーに味を出している。
堅物皮肉老害ハウンド。人格破綻執事コグマン。ボケ老人のブルドッグ。完全に只の大型犬と化したグリムロック。品種改良された小型犬のミニダイノボット。と、言った具合にキャラクターの一人一人が個性的だ。オートボット同士、又はオートボットと人とのユーモア溢れるやり取りは見ていて楽しい気持ちにさせられる。特に個人的にはスクラップ場で『サザエさん』顔負けにのほほんと暮らしている姿に癒された。

名優アンソニー・ホプキンスもキャリアの中でも最高にテンションが高く、只の添え物になっていないのも非常に好感が持てる。軍神の肩書きだけ与えて身動ぎ一つ取らせない様な起用の仕方をする何処ぞのアメコミ映画とは雲泥の差がある。何より本人が楽しそうに役に臨んでいるのが感じられ、観ている方も楽しい気持ちにさせられる。
マイケル・ベイ監督の好みかは知らんが全シリーズを通して出てくるヒロインはアメフト部のエースの彼氏持ちのスクールカースト最上位ビッチ感溢れる女性ばかりで個人的にはイマイチハマらなかった。しかし今作のイザベラ・モナーは良い!!序盤のジュブナイル感。ケイド(マーク・ウォルバーグ)との家族愛を表現するのにも十分な役割を果たしており、何より可愛い!!スクィークスとの微笑ましいやり取りも互いのキャラクターの良さを引き出している。只マイケル・ベイに見初められたって事は将来的にはビッチ系女優になる事が確約されたって事でもあるのか?えっ?ローラ・ハドックがヒロイン?ちょっと何言ってるのかわからんな。

オープニングシークエンスの中世イギリス時代の合戦も掴みとしては申し分ない大迫力だ。オートボットがキング・アーサーの後ろ盾をしてたとか。魔法使いマーリンが召喚してたドラゴンがオートボットだったとか。完全に荒唐無稽で破茶滅茶な設定だが凄い胸が熱くなるなったし、回想に使うだけでは本当に勿体ないなと思う。是非ともこの設定を舞台にしたスピンオフ作品を作ってほいと切に思う。少なくとも“スラムのガキから王になれ”より面白くなるだろう。
現代パートの謎解きも「実はストーンヘンジが世界の中心だった!」とか言われて「マジかよ!?スゲー!!」って思ったりしたのだが、観終わった後思い返すと何が凄いのか一切分からん。そもそも整合性が取れているのか甚だ疑問だ。だが観ている時にはそう言った疑問や矛盾を感じさせない(感じる暇を与えさせない)強引さ、中毒性で物語と観客の意識をグイグイ引っ張って行く所も評価できる。まぁ基本的には新設定は後出しなので全然上手くはないのだが。加えてロケーションの美しさもバトルシーン、ドラマパートの説得力を増すのに一役買ってる。

ただ、ノリと勢いで物語を進めて行く形態上粗や無駄が相当多くはある。
まず時間が長過ぎる。全編クライマックスみたいな内容なのだが、流石に無駄なシーンが多すぎる。先述したキャラクター同士の軽いユーモアは説明的な会話のエッセンスとなって良いのだが、明らかに過剰なユーモアで物語のテンポを悪くしてる。ケイドの彼女いない歴を詰るシーン、潜水艦内でのやり取りなんかは本当にいらんだろ。つーかマーク・ウォルバーグあの髪型似合ってねえぇぇぇ!!襟足切れええぇぇ!!
そしてコンボイもといオプティマスプライムのボンクラ加減はいったい何なんだ?殆ど洗脳されに母星に行ってる様なもんだし、帰って来たら来たで直ぐ洗脳解けるわで本当によく分からん。ストーリー上は戦犯なのにすぐリーダー面するし、何なんだこのイボンコ。
あと相変わらずディセプティコンが無能且つ弱過ぎて不憫になる。金属生命体収容所(この設定はメチャ好き)から仲間を集める所なんかは『スーサイド・スクワッド』みたいなアウトロー集団感があって良かった。しかしオートボットと対決した途端一瞬にして敗北するのを見て一連のシークエンスの必要性、ディセプティコンの存在にすら疑問を持った。ディセプティコンが早々に退場してドローンに尺使うってどうなのよ?しかもラストには火事場泥棒みたいな事してドヤる所なんかは最高にダサい。
マイケル・ベイ特有のカメラワークなんかも過剰演出の気がしなくもない。頻繁にスローを使い、キャラクターの接写、その後ろから西日ビカー!!。それがマイケル・ベイの作家性なんだろうけど過剰に使い過ぎて有り難みがなくなるし、なんか暑苦しい。あとこれが一番気になったのだが画面アスペクト比が頻繁に変わるのあれ何?とにかく画面の幅がやたらと変わるのでめちゃくちゃ気になって集中できんかった。劇場版でもあの仕様だと凄い問題ある気がするんだが?

今までこのシリーズ全然好きじゃなかったのだが今作は今までの中で一番出来が良かったのではないかと思う。前作の“牛乳事変”を目の当たりにした時はどうなるのやらと思ったりしたが、今作では冷静さを取り戻しており何よりだ。まぁ、前作でシリーズに対する評価が地の底まで落ちたので相対的に今作が高くなったただけの様な気はするが深く考えるのはやめにしよう。
製作費だけ見ればアメコミ映画の大型クロスオーバー作品と大差無いし、寧ろ少ないぐらいだ。しかしアメコミ映画に比べてキャストの費用を抑えれるのもあってか、バトルシーンでのVFXの豪華絢爛さはこちらの方が圧倒的に上だ。シリーズはまだ続くようだがまだ追っても良いかな?って気持ちにさせられただけでも十分成功作だと感じた。
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