JunIwaoka

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲のJunIwaokaのレビュー・感想・評価

4.6
2015.11.23 @ 新宿シネマカリテ

カンヌ映画祭を打ちのめしたという宣伝文句が大袈裟にならないとてつもないインパクトに圧倒された。序盤こそ不遇な環境で離れ離れになってしまう愛犬ハーゲンとリリーの物語だけど、そこから一転して緊迫感ある濃厚なドラマだったり、戦慄のホラーだったり、"アモーレス・ペロス"や"パフューム ある人殺しの物語"を彷彿させる急展開に面を食らう。戦う101匹わんちゃんの如くストリートを駆け抜ける250匹の怒涛の犬たちが圧巻で、それでいてラストシーンの描写の素晴らしさにグッと涙がこみ上げる。
人間の身勝手さによって、飼い慣らされた犬の野生が目覚めて敵対するというところは確かに"猿の惑星"的ではあるんだけど、あまりにも人や犬がシンボリックに描かれていて、途中から犬とは思えなかった。専横的な体制を強いる支配層と蔑まされ武力行使に走る抵抗勢力の構図で、それを本来なら美しい従順関係であるはずの飼い犬というところに回帰することに希望を見いだす。先日パリでの痛ましいテロがあっただけにこの投げかけは本当に素晴らしいものだと思うよ。動物保護施設は収容所だし、制御できない野生はテロリズムであって、武力行使を許容する訳では決してないんだけど、タイトルにもある通り、白人は神なのか?という問いかけを叩きつけられる。人が犬の野生を利己的に目覚めさせるシーンはなんかいろいろと彷彿させられて堪らなかったし、このシーンは犬好きな人酷すぎて目も当てられないと思う。隣の席の方は途中退室してた。
そして重要なのが、リリーが学校の吹奏楽団で演奏する曲のハンガリー狂詩曲で、複雑な状況下のもと敵対する両者が帰属意識を思い起こして、ハンガリーという国を共に安住できる理想郷と夢見ることが素晴らしくて、いまの世の中こういう考えを持つことが唯一の解決策なんじゃないだろうか。それをあんなラストシーンで描いてみせられて、その希望に胸を打たれて涙が溢れた。