滑頭

スラッカーの滑頭のレビュー・感想・評価

スラッカー(1991年製作の映画)
3.8
映画冒頭、監督自身が登場したかと思いきや、あれよあれよと主人公が変わっていく。登場したと思ったら、そこに通りがった人が次の主人公になり、また主人公が変わり、変わり、変わり、という風にして、カメラが流されるようにして色んな人についてっちゃう。そういうルールで作られた映画。

この頃から、現在に至るまで、例外的な作品もあるものの、基本的な映画制作のスタイルは変わってなくて、それでいて成功を収めてるんだから凄い。
いわゆるストーリー的なものはリンクレイターの映画では希薄で、そこを期待して観ると「なんだこれ」と思うだろう。特にこの『スラッカー』は、本当にストーリー的なものは無い。皆無。恐らく24時間の話。
登場するキャラクター同士は全く知り合いでないことがほとんどで、そして一度も心が通じ合わない。バラバラ。バラバラの上辺だけの人間関係の連続が延々1時間半。
実験的で、試み自体は面白いと思うけど、正直、途中ちょっと飽きた。
けど、リンクレイターのフィルモグラフィを考える上では、興味深い作品。観て良かった。

"スラッカー"というのは、元は徴兵制を拒否していた人達のことで、転じて、静的とか努力してないとか熱心でない、みたいな意味。
一見なんの脈絡もなく、関係性もないように見える数多の登場人物たちだけど、タイトルの意味から考えるに、出てくる人達みんな、スラッカーなんだろうと思う。頭でっかち。頭の中で考えをこねくり回してばっかで、それを偉そうに友達や道行く人には話すけど、一度も、実際に実行に移してない人たち。そう僕は思いました。
頭おかしいだろって人もいっぱい出てきたよなあ。全体的に陰謀論者みたいなの多かったよなあ。解釈に関してはまだ不十分や。
一回ガンマイクがカメラ入っちゃったりしてて、あ〜自主制作だなあ〜って。若かりしリンクレイターの、やりたいことがまだまとまりきってない形で、そのまま表に出てきてる感じが、面白かった。
しかしよくこんなに演技できる役者をいっぱい集めたよなあ。それがすごい。

『コーヒーをめぐる冒険』にちょっと似てるな。てか『コーヒーをめぐる冒険』が、リンクレイター的なんだな。

2017/02/03 @アップリンク渋谷
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