まっつん

恋人たちのまっつんのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
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『ぐるりのこと』から7年、橋口亮輔監督が最新作でスクリーンに切り取ったのは、絶望の淵で必死にもがきながらも、懸命に前へ進もうとする人びとの姿だ。映画を含めて、あらゆるカルチャーは時代性を映す鏡と言えると思うが、『恋人たち』はまさに現代日本の世相を鮮明に映し出している。

橋口監督の言葉を借りるならば、本作は「飲み込めない想いを飲み込もうとする人」たちを追った人間ドラマだ。貧困、広がる格差、他者への不理解・不干渉、原発問題、性的マイノリティへの眼差し。劇中では、現代日本に山積するあらゆる問題が浮き彫りにされていき、そこに苦悩し煩悶する人びとの姿が、これでもかというほどリアルに映し出される。故に、鑑賞中は胸がキリキリと締めつけられるような思いに駆られて仕方がなかった。しかし、それでもなんとか前へ、前へと進もうとする劇中の人びとの姿には心を打たれずにはいられない。ラストカット、都会に映る小さな青空に希望を託そうとするアツシの姿に、胸が打ち震えた。

先述したように、映画は時代を映す鏡だ。「いま」を描いた本作を「いま」観ることで、劇中で描かれる人びとの感情の機微をよりビビッドに感じとることができるはずだ。そして、現代に必要とされる「優しさ」とはなんなのかを自身に問ううえでの良い機会にもなると思う。


以下は余談になるが、記録の意味も込めて。去る11月8日、本作の先行上映の終了後、橋口監督とアツシ役をつとめられた篠原篤さんのティーチィンが催された。本作の制作に至るきっかけや、撮影にまつわる苦労などを、限られた時間のなかではあるが、じっくり丁寧に話していただいた。なにより、話しぶりからお二人の暖かい人柄が伝わってくるようで、心地のよい雰囲気のなか、素晴らしい時間を過ごすことができた。尊敬する監督と、その作品に出演された方から直にお話を聞けた経験は、僕の一生の宝になると思う。