片腕ファルコン

恋人たちの片腕ファルコンのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
3.3
間違っても「頑張れ!」「可哀想..」なんて言葉じゃ済まされない リアルな日常の影で絶望の淵にもがき苦しむ人たちの悲しき群像劇。

とにかくリアル重視、いかにもセリフっぽいセリフはなく、役者もほとんど無名、場を乱すような違和感ある演技もありません。
さすが橋口亮輔監督って感じです。

通り魔に妻を殺さて高い弁護士費用を払って貧乏暮らしを余儀なくされる男。
平凡な生活から抜け出そうとある男性と知り合いのめり込もうとするもネズミ講や詐欺、覚せい剤など危険な世界の狭間に立たされる主婦。
ゲイで親友にずっと思いを寄せる片足骨折中のエリート弁護士。
話はこの3人を軸に救いのない展開を繰り広げます。やはり妻を失った男が一番ヘビーで正直後半は直視できませんでした。

時折、脇役達がユーモアで笑わそうとしてくるも とてもじゃないが笑ってる場合じゃない空気感。。
出てくる人ほとんどマトモじゃない中で、片腕のない上司だけが人格者でした!さすが片腕!!
― 殺しちゃったら、こうしてお話できないでしょ ―
彼のセリフが一番グッときました。

周りからユーモアや優しさをもらっても結局最後は自分自身が立ち直るしかありません。
3人の主人公が見据えるかすかな希望に、自分も救われた気分になりました。

とは言えあまりにも重すぎますね、この映画。
やっぱり『ぐるりのこと。』を超えるまでではありませんでした。
篠原篤って役者、目力スゴイ。注目。