まつき

恋人たちのまつきのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.2
今年から映画に夢中になり、かなりの本数を観てきたつもりだけど、この映画を観終わったあと、味わったことのない感情に襲われた。映画すごい。邦画すごい。感動というより圧倒?すごく文章にしづらい。この映画面白かった!とかそんなストレートな感動じゃない。もっとぼんやりとした何か。

本作の主人公は3人で、話が別々に進行する。群像劇。それぞれがいかんともしがたいバックグラウンドを抱え、不器用ながらも生きている。

この3人を始めとした、登場人物の、人物描写がとにかく素晴らしい。邦画でよく揶揄される、「演劇風のわざとらしい演技」は控えめで、自然体で話すし、動く。セリフも生々しくてよい。

とくに主人公3人の人物描写が生々しい。3人とも無名の新人俳優なのだそうだが、実は先にオーディションでこの3人に決めてから、それぞれの性格にあったキャラクターを作り、脚本が書かれたのだとか。どおりでそこに存在しているように見えるわけだ。

3人のエピソードは交わりそうで交わらない。これといった目的もなく、3人それぞれに起こる出来事を見守るだけ。いわゆるエンタメ映画とは違う。基本的には"よくないこと"が続くが、時に救いの手が差し伸べられたり、シュールな笑いがあったり、ほんのりと暖かみがある。劇場内ではちょくちょく笑い声が聞こえた。

やがて、やっぱりどうしようもない、という現実に叩き込まれた後、3人に光が差し込む瞬間が訪れる。完全に救われた!というかんじになるわけでは決してない。

ただ、その瞬間、なんだかものすごくほっとした。この感覚が、胸に刺さった。

劇場内では号泣している人も何人かいた。きっと主人公たちに共感したり感情移入していたのだと思う。私は、「もっとちゃんとしなさいよ!」と見守っていたので、泣きはしなかったが、その分ほっとした。感じ方の余地が広いというのも、この映画の魅力だと思う。