「ぐるりのこと」の橋口亮輔監督の7年ぶりの新作です。いろんな映画やドラマで見た事あるーって言う役者さんが勢揃い。で、主役の三人はと言うと・・・すみません、知りませんでした。どうやらオーディションで選ばれた無名の新人らしいです。ですが、この三人が全員とも本当に素晴らしかった！
お話はこの三人の恋人たちとの甘い生活が描かれるわけではありません。かつてはあったけど失われたもの。その喪失感のようなモノ冷たく描かれます。予告篇からして覚悟はしてましたが、ホントにホントにヘビーでした！ひとりは妻を通り魔に殺され、精神を病んでいる橋を点検をする人。ひとりは姑と会話の無くなった夫との味気ない毎日を送る主婦。ひとりは大学時代からの親友に想いを伝えきれないゲイのエリート弁護士。三人の幸せだった頃が何となく仄めかされる為、現在の影をより一層と濃く感じます。
それぞれが吐き出す心情が映画全体に対する言葉になっているのも良かったです。橋を点検して言う「ぜーんぶ壊れてるよ！」だったりと、ハッとさせられものがあります。他にも何気無いセリフのようでいてこちらに大きく投げかけてくる、気の利いた演出です。
橋を点検する人を撮らえるシーンでカメラが不自然にいきなりグーンとズームするシーンがあります。この映画は監督の実体験をベースにしてる所があると聞きました。このシーンは監督の想いが爆発した瞬間なのではないでしょか？役者の熱演に触発されてズームせずにいられなかったカメラマン。そしてそれをOKにせずにはいられなかった監督。こんなに感動的な熱いシーンを観れる事はそう無いと思います。
そして、なんて事無いセリフがあんなにも気持ち良く響くラスト。Akeboshiの曲と相まって最高の余韻を胸に劇場を後にする事が出来ました。
