ゆっけ

恋人たちのゆっけのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.0
あまりにもリアルすぎて観てて辛い。けれども2時間20分夢中で見てしまう不思議な映画。

実は自分好みとは言えない映画だったのですが、とにかく何か書きたいと思わせる映画でした。多くの人におすすめできる!映画でもないのですが、(東京で上映されているのは1館のみということで分かると思いますが)ひっそり書いてみます。

監督は『ぐるりのこと。』の橋口亮輔監督。『ぐるりのこと。』のみ鑑賞したことがありますが、ご自身の実体験をもとに描いた映画が多いとのこと。今回の『恋人たち』も監督の伝えたいという想いがとても伝わってきました。

後々になって思い返したり、考え直したりして深く心に刻まれる映画が比較的多いと思います。私、この映画観て、「いや〜、いやなシーンだなぁ」とか気持ちが良い感じがするものも少なく、映画ならではの気分を高揚する感動さがなく、なんとも言えない気持ちになりました。

3人の主人公がそれぞれ、誰からも共感し得ない悩みに苦しみ生きています。

生きていれば、不条理なことやどうにもいかないようなことに立ちはだかります。目の前にあるものは汚い(クソ)だらけというのも、実は現実だったりします。目の前の現状を打破しようと、なんとかもがいて、もがいていくのですけど、空回りし続けるだけで何も変わらない。答えが見えなくて、知らず知らずのうちに、見知らぬ誰かを傷つけてしまっていることもあると思います。

この先、生きていても何も良いことなんてないんじゃないかって思うこともあるかと思います。でも、ひとはやっぱり劇的に何か変わっていくことを望みます。それを”夢”とか、”希望”とか”きれい”なことに言い変えて、自分を正当化しようとも。。。

でも、実際よくある映画のように劇的な変化ってなかなか起こらないし、本当は側からみたら劇的に変化しているように見えるだけで、その人にとっては小さな変化が積み重なってそれがその結果大きく見えていただけなのかもしれません。

この映画の観てて素敵だなと思った点はそこにあります。正直ここの描写映画にしたいと思える?というようなダサいような所がやっぱり良いのです。

”希望”って実はそんなに綺麗に表現できるものでもなくて、きっと身近にある小さなものに隠されているのかもしれません。

「恋人たち」というタイトル、なんでこのタイトルにしたのかなぁって考えていたのですが、ちょっと腑に落ちた気がしました。”嫌”な現実と向き合いもがいて生きている3人の主人公。それぞれに恋をしたひとたちがいる。ともに歩むこともできない存在だけれども、きっとそのひとたちがいるから、少し笑ったり、輝いたりできる。少しおしゃれして頑張る主婦の瞳子も、受話器の向こうに誰もいないのに自分の想いを打ち明ける弁護士の四ノ宮も、そしてあの日一緒にあんな綺麗な部屋で過ごしていただろう橋梁点検の仕事をするアツシも、きっと愛おしいと思うひとがいるから、いたからきっと前を向いて生きていけるなってそんな風に思えた映画でした。


→#229 恋人たち/”よし”と前を見て言えるから http://yukke1006.com/2015/11/22/229movie/