mimitakoyaki

恋人たちのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.5
年に何回か観た後にガツンときて余韻を引きずる映画がありますが、「恋人たち」はまさにそういう作品でした。

まず、中心に描かれる3人の男女の実存感がすごくて、弁護士はそうでもないけど、作業員と主婦はほんとに地味で、ひっそりと街の片隅にいて特に気にも留めないような存在なんだけど、こんな人いる!なんなら会ったことある!くらいの感じがします。

そして、その3人がそれぞれに抱える悲しみや怒りや絶望とそのやるせなさが、セリフ以外にもいたるところから伝わってきて、その丹念な描写が本当に素晴らしく、人間の内面の声に出さずにいる部分まで丁寧に見せる手腕に感動しました。

理不尽に突然に愛する妻を奪われた作業員アツシが、その事によって二次的にどんどん追い込まれて絶望の深みにはまる様は、観ていてとても苦しいし、どうすれば救われるのか、もし自分なら?と想像すると恐怖を感じるくらいですが、アツシの存在を認め寄り添ってくれるたった1人の存在や、同じように深い喪失感から抜け出せずに苦しむ人の存在によって、ほんの少し前を向ける、空を見上げられるようになる、そんなささやかな救いに希望を感じられました。

しかし、あたしが一番シンパシーを感じたのは弁当屋に勤める主婦で、あの「オバチャンの代表」とでも言えるような生活感むんむんの顔や体つき、その人のやる事なす事がほんとにリアリティがあって、食べこぼしたちゃぶ台を黙って拭いてる感じとか、コンドーム買いに行く感じとか、脇を剃ったり(好きな男と会う時のトキメキや気合い、期待感の高さを感じさせるし、脇毛の伸び具合でいかに彩のない空虚な日々なのかわかる、脇毛の使い方スゲーー!)セックスのやり方も終わった後も、ほんとに生々しい!

いつもは化粧っ気もなくていたって地味なんだけど、たまに張り切ってオシャレしてるつもりが、それ20年前に買ったやろ?っていうような丈が短めの黒の花柄レースのワンピースとブーツがまるで浮き上がってて似合わないし、ブーツが鶏のフンやらで汚れたりとか、とにかく痛い!なんか上手くいかない、空回りする、裏目に出る感じに、この先に何かいい事あるんかな…というため息しか出ないような諦め感をすごく感じるんですよね。

姑のラップの使い方とかね、あんなんされたらイラッとしますよ。
ほんの些細な事だけど、すごく嫌で受け入れられなくて、そんな小さい事でも意外とストレスになる感じがすごくわかるし、あの住んでる家だって、あの古臭さからして、夫の実家で同居してるんでしょうね。
この人、甘い2人きりの新婚生活とか経験せずにずっときたのかな、なんて思うと、潤いのない日々や人生にその主婦の幸薄さを感じました。
そういうとこ、ほんとに上手くついてくるんですよね。

言い出したらアレもコレもとたくさんあるんですが、そういった日常の中でいつも感じる絶望や諦観が、人との関係の中で僅かながらにも変わっていき、その小さな変化がなぜか、大丈夫、これからも生きていけるよ、という明るい兆しを感じさせて、とてもとても良かったです。

【15-63】