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恋人たちのshitpieのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.0
あんまり多くを語るつもりはありませんが……。城くんがこの映画についてなかなかいいことを書いているので勝手に引用します。「疑問なのは、橋口監督は自らのセラピーのため、もっと言えば世のへの復讐のために映画を作っているのだろうかという点。(中略)現実に自分が苦しめられたものに、映画の中で主人公が苦しめられる。そこで発生する問題はどこか被害者意識に満ちている」。そう。橋口監督、ちょっと人間嫌いがすぎるのではないでしょうか。それゆえに人間を醜く描きすぎているのではないでしょうか。悪意、というよりも怨み節とでも言うべき“くさみ”が脚本から立ち上がる瞬間があまりにも多すぎます。

まだ城くんの尻馬に乗ります。「今回も演出のディティールにとにかく驚きっぱなしだった。あのおばさんが夕食後に机を拭く、人蔘のカスを手で拾っているをみて、ああそこまでやらせるのかと。机を拭く行為を演出するなら人蔘のカスを手で拾うくらいやらないといけないんだよなあと」。まさに。今作における橋口監督の演出は、わたしたちの生活動作と、わたしたちの揺れ動く感情の機微への鋭い眼差しが感じられるものでした。とはいえ、というか、やはり、時にその演出には、悪意のようなものが感じられる瞬間もまた多くありました。

しかしながらこの『恋人たち』を力強い作品にしているものは、そういったくさみのある脚本や演出を乗り越えて、スクリーンを超えて観客たちに飛び込んでくる俳優たちのすさまじい演技そのものなのです。主演 3 人の規格外の演技にわたしたちは泣かされ、また笑わせられる。監督による脚本と演出、そして役者たちの演技という 3 者が理想的なかたちで映画に結実しています。

最後にめちゃくちゃ偉そうなことを言ってしまうと、このレヴェルの邦画だったら観たい、という意味で、この醜く悪意に満ちた、傑作とは言い難い映画にこのスコアをつけました(というのも、ラストのアツシが「世界を肯定する」シーンはあまりにも安っぽく感傷的にすぎるからです。映画のあの“結論”が、もうすこしひねったものであったとしたら、ぼくはこの映画を傑作と呼んだでしょう。でもあのシーンがこの映画の不浄をさっと洗い流す作用をもたらしていたことも、また否定できない事実なのです)。このぐらいのレヴェルのドラマ映画じゃないと、海外のものと並べて観ることができません。