RYUYA

恋人たちのRYUYAのネタバレレビュー・内容・結末

恋人たち(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

11月28日、フォーラム仙台にて鑑賞。
11月29日、フォーラム仙台にて鑑賞。
せっかくの短帰省が『恋人たち』に奪われてしまった。

「今の日本人が観るべき映画だよ!これが日本映画の在り方なんだよ!これが真の演技なんだよ!頼む!観てくれ!」とアツく語り終えてパッと母ちゃんの顔を見たらビックリ。もろ真顔。

それもしょうがない。
絵文字だらけのメールで「ギャラクシー街道観たよ〜」と明るげに言ってきたし、だってDVD出たら観れるし、映画館は高いし、面倒くさいし、素人ばっかじゃつまんないし、、、
俺は山形に戻り、飲み込めない思いをIKEAのスカした間接照明に照らされながらゴクッとビールで飲み込んで過ごしてましたよ、、、柿ピー食って、、、

しかし先日、母から一通のメールが届きました。
内容は伏せますが、絵文字はゼロ。
切実な感想が、胸を刺しました。
死ぬのがどうゆう事かは知らないけど、死ぬほど嬉しい。
「泣いた」という言葉が出てきたけど、なんの涙か分からないと言った。
すごく良く分かる。
それが映画の感動なんだぜママ。
それは『グリーンマイル』の涙とは違うんだぜママ。
パート上がりのママを、こたつから出せただけでもアレなのに、感動までしてくれた。息子冥利に尽きます。


と、ここまでは枕詞みたいなもので、ここからは過去最長、怒涛のレビューに入ります。

まずはご報告から。
これ、今年のベストムービーです。
本当に本当に素晴らしかった!
襖の隙は見当たるけど、文句の隙は見当たらない。

橋口亮輔監督こそが今唯一の‘‘日本映画監督”なんだなと、「痛い痛い!」ってくらい痛感。
8ヶ月も考えられた脚本(特に台詞)のクオリティを、その想定を、無名役者に越えさせる。限界を越えた演出力。

シーン終わりごとのキレ、小道具・衣装への愛と執着心とその効果、「ちゃんと‘‘演技を撮る”」という意志を思わせるカメラワーク、約2カ所にしか挿入されない音楽の絶妙なバランス、、、
全編に漂う残酷さと惨めさと悲しみ。
その全てを肯定し愛する監督の魂。
なんども言うけど、素晴らしい。


通り魔に妻を殺され、今は橋樑点検の仕事をしながら裁判費を稼ぐ、アツシ。
寡黙な夫とケチな姑と、寂れた平屋で退屈に暮らす主婦、瞳子。
完璧主義で、恋人にも文句ばかり垂れるゲイの弁護士、四ノ宮。

この主人公たちが、恋人たちで、
共通項は「痛み」だと思います。
パンフレットで角田光代も書いていたけど、
アツシは「痛い痛い」と周囲に喚き散らし、あしらわれて加速する。
瞳子は‘‘王子様”と出会い、徐々に少女になってゆくけど自分の「痛さ」には気付かない。
四ノ宮は人の痛みも自分の幼馴染に抱く恋心からくる「痛み」も、見て見ぬフリをしている。

それが、それに、それぞれが気付き、「聞こえない相手」に独白するクライマックス。大事なことは何も解決しないのに、なぜあんなにも胸にくるのか。

途方に暮れ、剃刀で自傷しようとしたアツシは「街で見かけた恋人たちが美しかった」と、亡き妻に語る。
あの時の演技はもう、いや、何あれ。
すごいことになってましたよ。
でも「あっ、映画だ」と。

この映画の素晴らしいところを挙げるとキリがないけど、もう何点か、、、

俺がグサッと刺さったのは、上記の「その3人の痛みって、人はみんな経験してるよね」って事に気付いた瞬間。

妻を亡くしたアツシは病院や役所に行くけど、相手はデスクに向かっていたり、向かい合ってるのにマスクで壁を作っていたり、、、
人の痛みに気付こうともしない現実が、まずある。

だから観たときは「俺も、気にもせず誰かを傷つけてたんじゃないか」って思って、ヘコんだ。

でもこの映画が素晴らしいのは、あのゲイの弁護士をも主人公にしちゃうとこなんだよね。
彼は、アツシから見たら医者とか役所の職員とかと同じ「嫌な人」なんだけど、彼も彼なりに悩んでいる。
そこも描くって点がニクい!
「これ以上は、僕が傷ついちゃうんで、、、」って台詞とか、ニクいなぁ〜。

しかも、ほぼ全てのシーンに笑が入ってるのも、すごいと思う。
特に、主婦のエピソードは笑いが多くて、美女水の、「しっとりする」のくだりとか、最高っす。

役者が端から端まで全員完璧です。

山形では1月下旬からスタートするので、もう三回は行こうかと。

「よしっ」