法一

恋人たちの法一のネタバレレビュー・内容・結末

恋人たち(2015年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

 光石研には笑った。あのシーンはまず登場の仕方からしてステキなんだが、その後何度やってもうまくいかないというのが良い。やはり映画のシャブ中は良い。

 法廷に現代社会の歪みを集結させていた『ぐるりのこと。』と違い、暴力も悪意も無理解も不寛容もそこらじゅうに遍在している。そしてそれに対応するように、救いも至るところにあるのかもしれない。そういう物語だから、夫婦間の繋がりに重点を置いた『ぐるりのこと。』と違い、焦点が定まらない形になるのも理解する。しかし「重点」はなくともひとつひとつのエピソードのエゲつない面白さは高水準で、二時間強もまったく苦にならない。

 にも関わらず、個人的にはこの映画に不満を感じてしまった。というのは、中盤以降さまざまな形で描かれる「救い」の描写が、全編を覆うキワッキワの「不穏さ」描写に比べて、テンションが低いように感じてしまったからで、しかしこれは自分の興味というか趣向の問題かもしれない。
 「不穏さ」というのはつまり、篠原篤パートの役所だとか、池田良パートの旧友一家、そして成嶋瞳子パートのあれこれを彩るトーンのこと。気味悪さ・理不尽感・怒り・絶望・嫌悪など様々な感情を喚起させる、おそろしく身近な描写の数々は、新井英樹の漫画のように生々しい。そして笑える。このやたらと細かく意地の悪い描写は本作最大の美点だと思うのだが、これが「救い」の描写になると、なんというのか、結構アバウトな感じになってしまうような気がするんだよな。いや、まあ違うのかもしれないし、あるいはそういうぼんやりしたものに救われるっていうんなら、それもわかる。わかるが。

 主役の3人の顔がいいなあと思う。オザケンを100倍ムカつく感じにした池田良も最高だし、篠原篤のでかさも良い。彼が小さいハンマーをカンカンやりながら測量みたいのをするのだが、そのハンマーの音が観客ですら「ほんと(にそれでわかるの)かよ」と言いたくなるくらい貧弱なので不思議な気持ちになる。