KozaiSzatosi

恋人たちのKozaiSzatosiのネタバレレビュー・内容・結末

恋人たち(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

古来より、映画は登場人物の成長を描いて然るべきだ、といわれてきた。最近、それを打破するためか、世界的に「登場人物が成長しない映画」が少しずつ増えているようだ。
この映画もまさにその一つといえるだろう。

橋口亮輔という人は、とにかく細かい。全編通して、一見すると極めてリアルな、いかにもありそうな情景の積み重ねである。しかし、ほんのささいな仕種、一言、表情、あるいはカットが、実は重要な意味を帯びていたりするから、一時も目を離してはならない。直前まで他人だった二人が、次のカットでは不倫の仲になっていたりする。とある人間が呟いた一言が、終盤の伏線になっていたりもする。ともすれば美しい情景が、次の瞬間地獄になっていたりする。

通り魔に妻を殺された橋梁点検師(このやたらマイナーな職業!同じ橋口亮輔の『ハッシュ!』の主人公を思い出す)、皇族ファンで小説や漫画を描くのが趣味の中年主婦、威圧的でありながら人生に不器用なゲイの弁護士。
映し出される人は皆、どこかにいそうで、どこにもいない人たちだ。しかし、本編中、彼らには、実は何も起きていない。いや、既に起きてしまった後なのだ。
この映画にあるのは、彼らが、それでも何とか生きていこう、というシンプルな、答えにならない答えを見出すまでの道程に過ぎない。

しかし、それにもかかわらず、なぜこうも彼らが愛おしいのだろう。
なぜこうも説得力があって、他人事にはならないのだろう。
わからないが、観た後、自分の中で、何かが少しだけ、生まれていたような気がした。

何はともあれ、現代の日本映画が持つ「良さ」を、極限まで生かした、「真の」日本映画であることは間違いない。