このレビューはネタバレを含みます
20220819 自分用忘備録
出色の作品。めったにない映画をみたという感想だった。
映画はお金や公開の規模ではない。急にこういうものが飛び出してくるから端からみてしまうのだと思う。
目の前にいても、人には相手の危機も痛みも本当には分からない。ただ感じ取ろうとすることができるだけなのに、それもたいていは上手くいかない。
だから「悲しいことがあったんだね」は奇跡の瞬間だ。父を亡くした夏希と妹を失った夏生はそうして出会い、その子の夏実も喪失のあとあの場所で青年と再会する。次の世代へと愛の小さな歴史が連なっていく。
たしかにこれはフェアリーテイルの類いだが、映画にはそれでいいと思わせるだけの力があった。凄惨な経験から、囚われた怒りから、こみあがる涙から、それだけの力が汲みあげられてラストシーンに降りそそいでいた。
入神の酔態をみせる光石研さん、憤怒の地獄に囚われた中村江里子さん、割って入って堂々渡り合った池松壮亮さん、どれも見もの。ラフマニノフの交響曲2番は優雅で甘く、好みではなかったが、聞きいらずにはいられないほど物語と見事な対比をみせ、最後は響き合っていた。
アラは挙げればもちろんあるが、そういうものを飛び越えていた。感動。