かなり悪いオヤジ

愛の小さな歴史のかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

愛の小さな歴史(2014年製作の映画)
3.0
中川龍太郎の身内に自殺者がいるのかどうかはわからんが、この若き日本人監督間違いなく“自殺”を映画のテーマの一つに選んでいる。確かカイエ・ド・シネマの目にとまった次作『走れ絶望に追いつかれない速さで』も、自殺した友人の後を追おうとして死に切れなかった若者が希望を取り戻すお話だ。本作に関しては自殺者及び自殺未遂者がこれでもかと登場するため、倫理的に言ってこれってどうなの?という感想を持たざるを得ないのである。

一卵性の片割れが自殺するともう片割れが自殺する可能性が何十倍と跳ね上がるらしく、精神疾患の有無に関わらず自殺遺伝子は存在するのでは、という説が有力だ。いやそんなはずはない、生きるために生まれてきた人間に自殺遺伝子なんて.....と心の優しいあなたはそう思うのかもしれない。無尽蔵に増えると予想されていた世界人口がここもと頭打ちとなりいよいよ急ピッチて減少に転じていくらしい。何をいいたいのかと言うと、人口をある一定以上に増やさないためのリミッターがDNAの中に予め組み込まれているのではないか、という仮説である。

人間の密集度に直接関わってくるコロナ禍はももちろん、癌をはじめとする不治の病や、先天性傷害者やLGBTQの出生、地球温暖化→氷河期到来も、この自殺遺伝子同様の予め地球に組み込まれたリミッターなのではないだろうか。そんなバカな神が差別主義者であるわけがない、人類は神に愛された存在じゃないのか。だがそれは人間の一方的な希望的観測にすぎないのであって、誰も神の、いな自然の声など聞いた者などどこにも存在しないのである。

科学という新しい神を信奉することによって、人類はこれまでにもふりかかる困難を克服してきたではないか。いやいや金儲けのために対処療法で臭いものにふたをしてきただけですよ、そもそも人類だけを愛することは差別にあたらないんですか、何を勝手なことを(by 神)。自殺した身内の後追い自殺未遂者同士を無理矢理くっつけて、死んだ人間の身代わりにするなんて胸糞悪いにも程がある。そんな二人から生まれた子供もやっぱり...なんてシナリオのどこに愛があるというのか。ある意味レイシズムですよ、これは。