けんぼー

仁義なき戦いのけんぼーのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.0
2020年鑑賞192本目。
名監督、名脚本家、名俳優が世に解き放ったヤクザ映画の代表作にしてベスト作。

とある本を読んでいて「笠原和夫」という脚本家に興味を持ったのがきっかけで鑑賞。古い映画だし、ヤクザものだし、「アウトレイジ」とかあんな感じのやつなんでしょ?と決めつけてこれまで見てこなかったのだが・・・
予想以上に面白く、よく出来た作品だった。

第二次大戦後に広島で実際に起こったヤクザ抗争の当事者である「美能幸三」のよる手記に基づいた小説の映画化。
「美能幸三」をモデルとした本作の主人公「広能昌三」を演じる菅原文太をはじめ、松方弘樹や梅宮辰夫、田中邦衛など、今や日本人俳優のレジェンドとなった方々の、若くてエネルギッシュな演技が新鮮でかつ上手い。

また、深作欣二監督らしい、迫力のある乱闘シーンのぐらんぐらんするカメラワークは作品の持つ雰囲気にマッチしていて、観客を飽きさせない。脚本の笠原和夫はこのカメラワークが試写の時は気にくわなかったらしいが、後に劇場で見たときは受ける印象が変わったという。

そしてなんといっても脚本のすばらしさである。
主人公・広能昌三がヤクザ組織である山守組に入ってからの出来事を中心に物語が進む。裏切りが裏切りを呼ぶドロドロしたヤクザ同士の抗争は一見混乱しそうだが、その辺がきちんと整理されており、見やすいしわかりやすい。
物語の最初で主人公・広能は山守組組員のために人を射殺し、そして物語の最後に元仲間の葬式で、自分と同じく組織に翻弄された仲間の無念を想い、銃を発砲するという、物語の最初と最後を関連付けているあたりは構成としても美しかった。

ヤクザ映画としてだけではなく、一本の映画としてお勧めできる傑作。

2020/11/8観賞