Punisher田中

仁義なき戦いのPunisher田中のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
3.8
舞台は敗戦直後の広島県 呉市。
戦争帰りの広能は、山守組組員達に代わって刀を振り回す暴漢を射殺する。
それを機に刑務所に収監されるも、刑務所で土居組の若頭・若杉寛と知り合い、義兄弟の盃を交わしたのだった。
その後、若杉の脱獄を手伝ったことで広能は土居組の友好組織・山守組の組員となる...

今作が滅茶苦茶凄い作品なのは周囲の評を散見したことで見て取れたのだが、登場人物の広島訛りが凄すぎて本当に何言ってるかわからないし、気づいたら凄いペースでみんな割腹しだすわ、小指詰めるわ、腕切り落とすわで、異国の作品をずっと鑑賞している気分に陥ってしまい、久々に邦画で字幕をつけてしまった...
とにかく物凄いパワフルな作品で、今作が実録ヤクザ物だと飲み込めはするのだが、こんなにもパンチの効いた物だとは思いもしなかったし、娯楽として受け取れてしまうこんなにも血みどろの実話があるとは。
古い時代でも命を獲ったモン勝ちで、騙し撃ちや急襲なんかは当たり前。
戦後の荒波に揉まれ、荒みに荒んだヤクザ社会では最早、武士のように仁義を通せば損をし、仁義を切れば徳をする。
そんな仁義なき世界が今作ではこれでもかとバイオレンスに描かれている。

よく昭和はこうだっただの、やれ今ドキの若者は冷たいだのを良く昭和世代から耳にすることがあるが、今作を見てしまえば、この作品が流行ったあんたらの方が世代的によっぽど冷てえ血が通ってるじゃねぇか!と言いたくなってしまうな。
そんな本当に怖すぎる任侠映画体験をさせていただきやした。
よくヤクザ間の抗争を戦争と捉えたりすることに以前は違和感しか感じなかったが、今作の抗争を目の当たりにしてしまうと、本当に戦争。
チャカに日本刀、車やらなんでもありなサドンデスバトルは血祭りもいいところで、
そんな死のエネルギーに満ち満ちている今作だが、死の海流に逆らうように仁義を通そうとする広能の生き様は生のエネルギーに満ち溢れていて作品内で要素同士が乖離し続ける異様な作品だった。