こたつむり

仁義なき戦いのこたつむりのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.0
♪ 限られた生命は永遠を夢見るのか
  全ての絶望さえも救われるならば
  二度と嘆かない

やくざ映画を観ると肩で風を切るようになる。
…なぁんて言うんも分かる気がするのう。恥ずかしながら今回が初観賞じゃが、気付けば広島弁を話してるんじゃ。ついつい「お前さん」のことを「こんなぁ」と言うてしまうんじゃ。

これは劇物じゃのう。
戦後の闇歴史を勉強するような作りじゃけえ。観賞じゃなく履修になってしまうんじゃのう。ガキがせんずり覚えるように狂気を叩きこまれるんじゃ。

ほいでからに作ったのが70年代じゃないの。
まだまだ日本が狂うていた時代じゃ。作品もようけブチ切れてんも当たり前。臓腑がにがるようになるんも当たり前なんじゃ。

それに俳優さんの存在感も格別じゃけえ。
文太の兄ぃと梅宮の兄貴がすげえのは当然じゃがの。松方の兄貴が怖さと情けなさが入り混じった、むつこい役柄を見事に演じておった。さすがじゃ。

ほいで、木村俊恵さんもむつこいんじゃ。
ほとんどおなごが出ない作品じゃけえ。ひときわ目立つんも当たり前じゃがの。やねこい組長の姐さんちゅう役柄がピタリと合うていた。まさに怪演とはこのことじゃの。

しかもじゃよ。年代設定は終戦直後じゃないの。
それを1973年に作るのは、やねこい手間だと思うんが、そんなん感じさせんのが一流の腕ってもんじゃ。深作欣二監督の代表作と言われるんも分かる話じゃの。

まあ、そんなわけで。
慣れない広島弁で感想を書きたくなるほどに影響力がスゴい作品。血糊が鮮烈すぎたり、銃声がチャチだったり、色々と現実に引き戻される瞬間はあるんですけどね。それでも気付けばグイグイと惹きこまれるのは…やはり傑作。

ただ、気軽な気持ちで触れたらダメですね。
殺伐な気分になるのは確実。やくざは何処まで行ってもやくざなんだな…と当たり前の事実を突き付けられる作品だと思います。
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