もち食

仁義なき戦いのもち食のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
5.0
きつい広島弁に、混沌とした暴力描写、ドキュメンタリーのようにというより1人の人物の視点のように揺れ動くカメラ、なにより男達の汗と肉を思わずにいられないセクシーさ、、、泥臭い日本という風土の空気が否が応でも立ち込めてくる。
権利主義で良くも悪くも特定の思想や宗教を持たない日本の混沌を描写しているよう。見えない権力に依存し、朝鮮戦争で権益を掠める山守組はまさしく日本という国家を想起させるし、米兵のレイプ描写で始まるというのもなんとも象徴的かつこの時代においてもかなり挑戦的だろうし国家の現状への強い苛立ちを感じる。これが東映の商業映画として公開後、現在もクラシックとされているのは今となってはかなりの奇跡だろうし深作欣二のあまりに大きな功績と捉える。この作品には、この時代特有の国家への懐疑というテーゼと生活者の空気感がある。
公開年は1973年。前年にはあさま山荘事件、沖縄返還。本年にはオイルショックや公害発生などが有名だが、推測の域を出ないがまだ日本がアメリカとどのように生きていくかまだ民衆には見えていなかった時期のように思う。また経済と引き換えに何を手放しているのかを考えざるを得なくなっていった時代ではないだろうか。戦後。戦争が終わった時何をしなければならないのか。そのような不安を映し出していると思うのは、考え過ぎだろうか。
そのようなことはとにかく、この映画には映画に没入するという快楽と陶酔があるし、青春映画としても、協働する難しさの前に散る様は刹那的で切なく我々に共感と示唆を与える。強く生きたい、、、。
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