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仁義なき戦いの東京キネマのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
2.5
松方さん追悼12本目。
色々な意味で記念碑的な作品です。この作品以降、東映はヤクザ映画に留まらず、こういった「実録物」を「任侠物」とは別ラインで量産していくことになります。

この映画、それまでの東映ヤクザ映画のフォーマットを根底的に変えてしまってます。メインの登場人物が平気で途中で死んじゃう。これ、東映の場合は必ず続編ありきで作るんで、こういうのはあり得ません。とは言っても死んだ役でも何の脈絡もなく続編で生き返らせちゃうんで、意味ないんですけどね・・・(笑) それに組の抗争劇という基本構造はそのまんまながら、親分がとんでもなくみっともない(笑)(金子信雄が好演してます)これもそれまでの東映ではあり得ないんですよね。というのも、親分てのは(過去の)任侠道の雛形になっていて、(時代が変わってしまって)その
親分の権勢が堕ちた時、一宿一飯の義理を返す、けれど恋と人情の板挟みでさあどうする、ってのが任侠映画の基本パターンだった訳ですから、親分がしっかりしてないとドラマにならんのですよ。それで実録物という割り切りで事実関係だけの描写、つまり、シークエンス全てがピーク、行間なしの切った張っただけ、起結だけで承転なし・・・なので登場人物がいつも怒鳴り合ってるんですよ。見てるだけで疲れる疲れる(笑)

そしてなんだか途中のシークエンスが 『ゴッドファーザー』 に似てるなあと思ったんですが、調べると本作の公開より4ヶ月前に公開してるんです。やっちまったなあ~、深作さあ~ん、ですかね。。

肝心の松方さんですが、完全に仕上がってます。それも嫌な方向に・・・。監督が喜んでくれるから、の最終形なんでしょうが、これでその後の松方さんの役者人生は確定しましたね。その代わり、たまに見せていたピュアな「あの」松方さんはいなくなりました。残念です・・・。
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