Iri17

仁義なき戦いのIri17のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.8
ヤクザというのは一般市民には基本的に関係ない世界に思えるが、『仁義なき戦い』に描かれるヤクザは現代社会そのままだ。

意味のない争いで人が殺しあう。そこに仁義などないが、下っ端や若い人間が利用され、命を奪い、奪われる。その状況を操るのは金にがめつい権力者。自らの金や地位や権力のために、純粋な弱き者を利用するのだ。
それはポストモダンの現代資本主義社会のあり方そのままだ。経営者や大企業は、自らの利益のために、労働者を過労死や鬱になるまで働かせる。それは会社のために、社会のためにという集団意識を利用して行われる。まさにヤクザと変わらない。

最近話題の財務省の改竄問題も同じだ。高官のために忖度し、指を詰めるのはいつだって弱き者なのだ。上に立つ人間が下に立つ人間の責任を取ることは今の日本ではほとんどない。

最近同じような映画観たなと思ったら小林勇貴監督の『NIGHT SAFARI』と『全員死刑』だね。

仁義なき世界で仁義を通すことの難しさ、それでも仁義や己の信条を通す美しさをこの映画は教えてくれる。『ゴッド・ファーザー』を合わせて観たい作品だ。
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