わたがし

劇場霊のわたがしのレビュー・感想・評価

劇場霊(2015年製作の映画)
5.0
 ぱるるが困る!今年のメジャー邦画は何かと物凄いので、これも実はとんでもない大傑作だったりするのではないかと期待しながら観たのだけれど、これは何かまあ割とまあぱるるが困る!ぱるるが困る!「ぱるるが困る」という文章の美しさ。
 オープニングからギャグのような生真面目なような奇妙なテンションで始まり、そのままギャグのような生真面目なような奇妙な雰囲気のまま物語が展開していき、最後は割と本格的にギャグになって終わる映画だった。とはいえ僕はこういう力みすぎてギャグ化してしまった系ホラー映画が超好きなので、始終にやにやしながら楽しむことができた。クライマックスで全貌を見せる劇場霊がぱるるをガクガク追いかける場面は前衛シュールコントのようでめちゃくちゃ楽しいし変な笑いが出る。
 ぱるるが基本的に上手いのか上手くないのかわからない演技(めちゃくちゃハッとさせられる瞬間と「は?」とさせられる瞬間のダブルパンチ)をする中で、周りの役者たちもめちゃくちゃ上手い人もいれば完全に棒読みオブザイヤーの人もいたりして、その「混沌とした世界観」が中田秀夫監督の古臭いのか新しいのかよくわからない演出でじりじりと裁かれる。別の意味でのJホラーの真髄を感じる。こういう反応に困る映画、好き。
 残酷描写はやっぱり控え目なのかなと思いきや、意外にもクライマックスでは映倫G指定ギリギリまで攻めた描写が続いてワクワクが止まらない。ワクワクは止まらないのだけれど、人が死ぬ場面自体があまりにもバカっぽくて(劇場霊の人を殺す方法がやばすぎ)ドキドキは一切しないし、ホラー映画なのに信じられないぐらい怖くない。でも不思議と不愉快な気持ちにはならないし、穏やかな気持ちで観れるホラー映画、ということで同監督の『クロユリ団地』とむちゃくちゃ近いものがある。
 その他にも、ちゃんと設定を構築したかと思えば突然無視して好き放題し始める場面や、誰がどう考えてもおかしすぎる場面をサラッとクールにやってのけたりする感じ、数年前のメジャー邦画を思い出して懐かしい気持ちになる。ずっとこういう映画ばかり観るとストレスで心肺が停止するけれど、たまにはこういう映画も心地良い。ぱるるが初めから終わりまでスタイルの悪く見える芋っぽい服ばかり着ていて、それがこの映画自体の精神性というか方向性を表しているような気がした。