架空の国を舞台にした独裁者と孫の逃亡劇。
ある日クーデターが起き、彼は孫と国内に取り残されてしまう。
どこか寓話的なのに、始終シビアな展開。
独裁者一人を殺すことで全てが解決するほど世界は単純ではないことを、私たち誰もが知っている。
けれどそこに個人個人が受けた災難があれば感情が生まれ、罪のない幼い孫にまで人々の怨みが行く。
ルイ16世とマリーアントワネットがギロチンにかけられ、2人の子供であるルイ17世がどんな仕打ちを受けたのかを見れば、一体何が人間を人間たらしめているのか考えさせられる。
弾圧された大衆、独裁者に加担した軍部、クーデターを起こした側の横暴、悲劇がまた悲劇を生む地獄絵図。
負の連鎖を断ち切ることの難しさ。
復讐したい気持ちと、先を見据える視点と勇気。
混沌としたラストに、イラン亡命者である監督の問いかけがあり、観終わってからもずっと深く余韻が残る作品でした。