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独裁者と小さな孫のナガのレビュー・感想・評価

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
4.0
【ロードムービーのラストに海を選ぶのはなぜか?】

私はロードムービーと呼ばれる映画が大好きである。道を行く中でさまざまな人や事件に巡り合い少しずつ人間の内面や関係性が変化していく。この過程を長い道のりの中で映し出す。これが非常に興味深いのだ。

私がこの作品を見て、一番に頭に浮かべたのはノッキンオンヘブンズドアという言わずと知れたドイツの名作ロードムービーである。主人公は2人の死を待つ若者、独裁者とその孫ということで大きくことなっている。じゃあなぜ浮かんだか?それは最後にたどり着くのが海という点が共通していたからだ。

ロードムービーで最後に海を持ってくる所以を私は人間の小さな悩みや事件や争いは海という大きな存在から見るとちっぽけなものであるということを相対的に描き出すためであると私は考える。

ノッキンオンヘブンズドアでは人間の死というものは人間にとっては大きなものに感じられるが世界の大きな流れの中では小さなものであるということを相対的に描き出した。

ではこの作品で海に込められたメッセージはなんだったのか?それは人間の憎しみや復讐心、絶望、独裁制や民主制そんなものすべて含めて小さなものであるということを描き出したのだ。今回のロードムービーは、独裁者とその孫がが貧困や憎しみ、絶望を知るというのが大きな流れであった。革命軍や市民はその独裁者と孫を殺そうとする。しかし映画のセリフにもあったようにこんな奪い奪われる争いは何も生まないのだ。結局人間は目先のことしか見えていない、独裁制を崩壊させればいいとか、独裁者を殺せばいいとか。海は人間にもっと大きな目でものを考えろ、独裁者など海を前にしてはちっぽけなものに過ぎないぞと言っているのだ。

道の過程でさまざまなことが起こるロードムービーにおいて最後に海にたどり着くのは理想の終わり方の1つと言えるだろう。
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