回想シーンでご飯3杯いける

独裁者と小さな孫の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
4.0
超辛口の寓話といった感じ。

クーデターで国を追われた大統領と幼い孫の逃亡劇。独裁者としての祖父やクーデターの意味を知らない孫の目線から、大統領として、そして人間としての祖父の姿を描き出していく手法が素晴らしい。架空の国を舞台にした作品であり、政治や戦争を描くには、特定の政治思想に偏る事無く自由な作品が作れる点で、やはりフィクションの方が圧倒的に映画向きだと思う。

孫に「これはゲームだ」と騙しながらサバイバルを続ける構図は「ライフ・イズ・ビィーティフル」にも近いのだが、こっちの主人公である大統領は、反体制派の国民を処刑する等、かなり独裁的な政治を繰り広げてきた悪人である点が大きな違い。クーデター後もそのスタンスは変わらず。自分の命を守る為なら周囲の犠牲も気にせずといった感じだ。そんな祖父でも幼い孫にとっては尊敬できる人物。その疑いの無い目線が、逆に大統領の残酷さを浮き彫りにしている。逃亡を通じて彼の心に変化は訪れるのか?

最後の最後まで着地点が見えない激動のドラマ。人間とは? 国とは? 憎しみとは? 実話ではないので、明確な答えは提示されず、自分で見つけるしかない。そこが良い。