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ザ・トライブのlpのレビュー・感想・評価

ザ・トライブ(2014年製作の映画)
4.5
2014年のカンヌ国際映画祭で賞讃された、全編手話のみで描写される、字幕・台詞が一切無しのウクライナ映画。

昨年のカンヌで上映された時から気になっていた映画だったので観賞。観賞前は正直に言うと、全編手話で構成されているということで、期待はしながらも自分に理解できるのだろうかと、不安も半分抱いていましたが、そんな不安が全くの杞憂に終わるほど、映画は素晴らしかった!

聾学校に転入してきた主人公の男の子が、校内の不良グループ=トライブ(族)に深く関与するようになり・・・という話。
全編手話で語られるため、登場人物同士のコミュニケーションは全く分からないのだけれども、物語のアウトラインや登場人物の心情は、スクリーンからしっかりと伝わってくる点が素晴らしい。その言葉を介さずとも観客へ訴えかける力を下支えしているものは、ミロスラヴ・スラボシュピツキー監督(今作が長編映画初監督作品というからさらにビックリ)による的確な演出。ロングショットを用いたワンシーン・ワンショットの徹底が、登場人物の人間性を浮き彫りにすると同時に臨場感を高め、全編に渡る寒々とした映像は、ストーリーに潜む狂気と見事にマッチ。観客を映画に惹き付ける推進力となっていました。

また、余計な音楽を一切排して状況音だけで映画を構成する演出は、映画的な見所を産み出していて抜群に巧かったです。「映画内の音は観客には伝わるけれども、登場人物には伝わっていない」という点を活かして、他に類を観ない驚きとインパクトを残していました。(具体的な内容を書くとネタバレになってしまうことが歯痒い。)

前例の無い新しいものを見せてくれたという点で、紛れも無い傑作だと思います。
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