ねこ無双

ザ・トライブのねこ無双のレビュー・感想・評価

ザ・トライブ(2014年製作の映画)
3.5
聾学校を舞台にした青春クライム物。
犯罪が組織だっていて、勉学シーンがあまりないので、学生だと言うことを忘れてしまう。

本当に全編手話。字幕もないのでしぐさ、行動で観る強めの意欲を感じる作品。
セリフの内容は全くわからないが、それぞれの感情の荒ぶり、喜びはわかる。
逆にウクライナ手話を理解できる人だったら、物凄い情報量なんだろうと思う。

実際に目撃しているかのようなシーン毎のワンカット。遠くからだったり、近距離だったり、長い廊下だったり。
音は環境音、生活音、ささやき、手話で生じる手の音だけで、伴奏はエンディングにいたるまで何もない。

なぜこのように暴力が学校に蔓延しているのかわからないのと、個々のバックグラウンドがわからないので、私は感情移入する事が難しかった。
主人公が惹かれる、喜怒哀楽を激しく表現する女の子はどこか無邪気なところもあって、唯一見ていて体にも心にも痛々しさを強く感じる。
性的なシーンもエロくなく、むしろ痛々しさに満ちている(ボカシ凄いス)

少年は蔓延する暴力に取り込まれ、麻痺してゆく。今後どうなるとか、他者への気持ちとか、そんな事よりもただ自分の衝動だけ。
淡々と進行していき、忘れがたい衝撃のラスト。観る者を突き放すエンドロールに響渡る音。